Vol.503 10年5月29日 週刊あんばい一本勝負 No.497


灯台もと暗し

この1カ月、自室のリフォームや事務所の改修工事で、業者さんの出入りが多く、なんとなく落ち着かない日々だった。それも今日(28日)ですべて終わり。最終日の今日は朝一番で事務所のクーラー設置。15年もたってボロボロになったので新しいものと交換したのだ。と同時並行で自宅の調子悪かったPC環境も改善工事。友人の専門家Sさんに来てもらいガサゴソといろんなところを調整、ついでに寝室ステレオのチューナーの場所も移動してもらった。午後からは事務所に新コピー機設置。こちらはまだ3年もたっていないのに新製品に交換だ。コピー機はリース契約、新製品が出るたびに換えてもらっても逆に月額の契約使用料は安くなる。はてさてどんな仕組みでそうなるのか小生にはよくわからない。たぶん引き取った中古品を市場で売れるので、そこから利益が発生する仕組み、なのかも。

というわけで5月も終わり。今週はずっといろんな人にお願いして「マンガ家探し」をしていた。これからの企画で2,3人のマンガ家が必要になる可能性が出てきた。企画が決まってからあわてるのはまずいので、とりあえず数人をリストアップしておこう、ということになったのだが、これがけっこう壁が高かった。なかなか適任者が見つからない。最終的にはツイッターをやっている友人に頼み何人か紹介してもらった。ツイッタ―の威力、恐るべし。
とは言いながら、「これまで秋田県内で、どんな漫画家が、どんな作品を描いているのか」といった過去の記録に関してはツイッタ―は無力だ。「過去の秋田県」という限定つきなので、ネット情報も皆無といっていい。

こうした局面では人間の知力(記憶力)にしかたよれない。秋田県の出版状況を長い時間ちゃんと見続けてきた人間にきくしかない。そうした人脈を持っているかどうかも編集者の力量だ。こんな時によく相談するMさんに訊ねてみた。案の定、即座に過去20年間ほどの秋田で出版されたマンガ系の本の書名をスラスラと教えてくれた。さすが、である。
それらの本を図書館で確認してこようとしたら、舎員にぴしゃりと言われた。「それらのマンガ本ならすべて2階の保管庫にあります」。あれあれ、灯台もと暗し。アナログ系だけど無明舎もけっこうスゴイ。
(あ)

No.497

幸福日和
(角川書店)
盛田隆二
恋愛小説には余り触手が動かないのだが、この作家にはなんとなく好感を持っている。だからアマゾンのユーズドで「いつか読もう」と「代打」扱いで買っておいたもの。しばらく書棚に差し込まれたままだったが、先日読む本が切れ、文字通りピンチピッターで読みはじめた。主人公が出版社勤務で編集総務の仕事をしている25歳の女性。同業者の私自身もよく知らない華やかなファッション雑誌の編集現場がかなりリアルに描かれている。それだけでも十分に面白かったのだが、この編集総務の女性が編集長(もちろん妻子持ち)と恋に落ちる話である。こう書けば陳腐で何とも空々しいのだが、実際はディテールが実によく書けていることもあるり、不自然さのない、極めて精緻な構成の恋愛小説である。最後にはちょっと時間が飛び過ぎ、いきなり大団円風の終わりになるのはご愛敬。へんに純文学風に「あいまいさ」を残して終わるより、恋愛としてはこのほうがリアリティがある。全体が6章に分かれている。各章が1年分の出来事の記述で、この単純な構成が成功している。読み終わると、けっこうウルウル、視界がぼやけてしまった。でも、読者を泣かせてやろう、というあざとさはない。最近の恋愛小説はこのあざとさが鼻につき嫌なのだが、この作家にはそうした不自然さはない。

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