Vol.506 10年6月19日 週刊あんばい一本勝負 No.500


「バード」漬けの日々がはじまります

ようやく仕掛の仕事がおおかた終わり、夏から秋にかけて刊行予定の本の編集作業にかかっている。
秋の新刊の目玉は「イザベラ・バード」。もう何度も出す出すといって出ていないから「オオカミ少年」のそしりを免れないのだが、やっと本格的に動き出しました。A5判上製本で2段組み450ページ、定価は3600円という大冊です。書名は『イザベラ・バード紀行――『日本奥地紀行』の謎を読む』――』。実はほぼ編集校正作業は終わっていて8月初めには刊行できる予定です。
そしてそのあとすぐ、同じ著者による取材メイキング本である『イザベラ・バードおっかけ道中記』も出る予定。この本は、本命の紀行を描くために取材した人や地域の「今」を描いたもの。随所にバードに魅せられた人や地域おこしの実情がルポされています。こちらは廉価版のブックレット、A5判並製本、120ページ、定価1500円といったあたりになるでしょう。
バード本は実はもう一冊準備中です。これは書名も決まっていないのだが、オールカラーのバード「日本奥地紀行」のガイドブックです。バードの足跡を丹念に辿り、訪れた地域の人たちに取材し、足跡をたどれるように編集した探訪ガイドブックである。書名は『イザベラ・バード探訪案内』といったあたりかな。こちらもA5判並製、定価1800円ほどで年内刊行を目指しています。

というわけで、まさしくバードづくしの日々ですが、合間に何点か面白い企画も挟まっています。編集者として一押しは「エンターテイメントも地産地消で」を旗印に、秋田を拠点に活躍するちんどん屋さん「ダースコちんどん隊」の代表カチューシャ安田さんが書き下した『教師をやめて、ちんどん屋になった!』(仮題)。前半部の原稿を読んだ限りではメチャクリャおもしろい。今年中に本が出れば大きな話題になるだろう。お勧めです。もう1本、無明舎出版が取材・執筆した原作を漫画化する企画があります。テーマについてはこの段階では公表できないのですが、こちらも出ればかなり大きな話題になるのはまちがいないものです。

こうしてみると今年の秋はかなり刺激的な日々になりそうです。自分たちで出す本に自分たちがコーフンして酔いしれているのですから、なんとノーテンギな、と嗤われそうですが、笑ってください。長く仕事をしていても、なかなかこんなふうに自分の仕事にドキドキしたり恋しちゃったりすることって、ないんですよ。ですから、たっぷり期待して大丈夫。
(あ)

No.500

あなたの若さを殺す敵
(朝日出版社)
丸山健二
もう丸山節はけっこう、あの激しさ、ラデイカルさにはとてもついていけない、と年相応に感じる。「ものわかり」がよくなっていい年なのだ。が、どうしてもまた本をひも解いてしまう。この書名、このアジテーション、わかっちゃいるけど極端で過激なこの著者のまっ直ぐすぎる生き方に惹かれてしまう。
本書は若い読者への「煽動」を意図したものであるのはあきらか。その刃先はとくにサラリーマンや政治家、同業作家たちに鋭くむけられる。本人自身が書いている。「芸術にせよ、発見にせよ、発明にせよ、ともあれ画期的な新世界を切り開いてゆこうとするには、私のようなタイプの、つまり、既成の概念をのべつ疑問視し、ときには真っ向から否定し、これまでの人としての在り方に異を唱え、世の中の流れに公然と逆らい、ために、ときに浮いた存在となり、ときに沈んだ存在にもなり、それでもどこまでも激しく生きる、どこまでも例外的な、どこまでも情熱的なマイノリティが必要不可欠」と断言する。この強さは読み進めるうちに徐々に弱いこちら側の読み手にもジワジワとしみ込んでくる。単なる偏屈な人間嫌いではないのだ。そんな人間はすぐに才能が枯渇して行き詰まり、長く小説家などやっていられるはずはない。

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