Vol.522 10年10月30日 週刊あんばい一本勝負 No.516


紅葉を追って

10月も終わってしまった。
初旬にドイツに行ったので、秋の一番の楽しみである「紅葉」を楽しむ回数が減りそうなことが心残りだったが、南ドイツも赤は少ないがけっこうきれいな紅葉だった。赤が足らないのはその昔カエデの木が大量に切られた歴史的背景があるようだ。ドイツの人たちは「紅葉」にはまったくといっていいほど反応しない。逆にツアーの九州から来た人たちが、落葉樹の落ち葉やリンゴの木に大げさなほど感動していたのが印象的だった。そうか九州のほうでは落ち葉の上を歩いたり、リンゴの木を観る機会って、少ないんだ。

ドイツから帰ってきて、そんなわけで、むさぼるように山行を繰り返している。帰った翌日は奥宮山(湯沢市)で翌週は甑岳(真室川)、次の週は安比岳(八幡平市)という具合。でもどこも紅葉は今一つだ。山で一体何が起きているのだろうか。ドイツでみた紅葉が一番きれいだった、で終わってしまうのは、ちょっと悔しい。

で今週(月末)は八甲田山(青森市)。ロープウエイ登口にすでに積雪。「これは山は無理か」とも思ったのだが、とりあえず行ってみることに。登山客はほとんどいなかったが、観光客の数がすごかった。最後の紅葉を観に来たのだ。登りはじめると、雪の重みで登山道に木のトンネルができていた。その下をくぐるように這い登らなければならない。これはこたえた。雪中行軍そのものではないか。どうにかピークの赤倉岳に登り、そこから大岳を回って酢ケ湯温泉に下りる縦断ルートだったがガスがひどくなり視界が利かなくなり、さらに雪でルートがわからなくなった。ほうほうのていで大岳避難小屋にたどり着き、そこから戻ることにした。往復4時間、匍匐前進つき登山である。ここでも紅葉には振られてしまった。

その日は黒石の温泉に泊まり翌朝、十和田市に寄った。そこへ行く途中、国道103号(蔦温泉付近)で、ついに「これぞ紅葉ッ」と叫びたくなるような紅葉トンネルに出会った。とにかく何キロも続く見事な紅葉回廊で、ようやくくすぶっていた不満がすかっと解消された。
十和田市では話題の「バラ焼き」を食べ、現代美術館を観て帰ってきた。
一人でこんなに車を走らせたのも久しぶりだが、念願の「2010年の紅葉」を観ることができて大満足。しっかりあの風景を胸に刻み、冬に備えよう。
(あ)

No.516

西郷隆盛伝説
(角川文庫)
佐高信
酒田は大好きな街で、年に5回は行く。おいしい店が多いし、懐の広い遊びどころ満載の鳥海山がある。四季を通じて飲食の楽しみや山遊びに事欠かない。自然と文化(飲食)のバランスがよくとれた町である。その酒田といえば土門拳写真記念館。その裏手にほとんど目立たない建物がある。山里の緑に隠れるように、まるで村の公民館のように、本書の主人公、西郷隆盛が祀られている。庄内藩に薩摩藩の英雄を祀る神社がある。もう20年以上も前、この辺をうろうろしていたとき、この神社を発見(?)した。なんで庄内藩に敵側である薩摩藩の大将の神社があるのか。奇人変人の類(マニアックな西郷ファン)が趣味で強引につくったものでもあろうか。そんなことを考えた覚えがある。 近年、戊辰戦争のことを調べる機会が多くなり、西郷隆盛の代表的な著作『南洲翁遺訓』(岩波文庫)という人口に膾炙している本が、実は庄内のこの神社を建立した人たちによって編まれた本であることを知り、びっくりした。本書の著者は酒田市出身。このへんの「事情」から物語ははじまる。薩摩から遠く離れた庄内で語り継がれる西郷伝説が、マイナーな地域資料から浮かび上がってくる。

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