Vol.527 10年12月4日 週刊あんばい一本勝負 No.521


舎屋ダイエット実行中!

40年近く同じ仕事をしていると、ずいぶんと「どうでもいい書類」が溜まってしまう。例えば、わが社屋の体重を100キロだとすれば(肥満体質です、すみません)、たぶんその半分近くがまったくのぜい肉ではないのか。というような埒もないことを考えだしたら、「この際、目をつぶって、その半分を捨ててしまおうか」という思いに駆られてしまった。
いや思い付きだけではない。いつまでも現役で、昔と同じように前に進むことしか眼中にない、という年齢ではない。身辺も仕事場も不要なものを整理し、身軽になることが、この年になると必要ではないのか、とは前々から思っていたことだ。穏やかに着地点を探しながら、降りどころをみつける年齢に、舎主も舎屋もなっているのだ。

そんなわけで、とりあえずはむやみに増えてしまった書類を収納する棚を見直し、そのほとんどを撤去することにした。棚がなくなれば、そこに収納していた書類、資料類は行き場を失い、処分しなければならない。水回りも、整理してみるとまったく何のために必要かわからない皿や台所備品の類が山のように出てきた。これもすべて整理。2つある倉庫の在庫も半分は捨て、1戸にまとめる計画だ(これは少し長期になるが)。
とにかく100キロ近い体重を少なくとも60キロあたりまでダイエットする。それに伴っていろんな問題も生じてくるだろうが、それはそのときになって考えればいい。

今年の前半、家の寝室と書斎をリフォームした。とくに寝室は全面的に作り換え、1日の3分の一は必ず居住する場所として、徹底的に居心地の良い空間をつくることにこだわった。それが成果を上げ、寝室で過ごす時間が飛躍的に多くなり、ここに帰ってきた途端、リラックスでき、かつ睡眠も深くなったような気がする。畳からフローリングへの大転換だったので、綿ぼこりが目立ち、掃除が大変だが、それももう楽しみになってしまった。シンプルで清潔で、真新しい空間でまどろむのは、大いなる喜びである。
このリフォームが成功だったことも、いまの舎屋ダイエットにつながっている。
何年経っても仕事場に来るのが新鮮で、楽しい、というのが自営業者としては理想である。この数カ月で、その理想へ一歩でも近づきたいと願っている。
(あ)

No.521

マタギ物見隊顛末
(文藝春秋)
葉治英哉

本当は書名の「マタギ」という文字は漢字なのだが、あまりに難しい旧漢字で実はワープロ漢字表にもない。そのためカタカナで代用したが実はこの本、最近、新人物文庫から再刊された。こちらのほうはさすがに最初から「マタギ」とカタカナ表記書名である。本書は第一回松本清張賞受賞作。94年の出版だからもう15年前の本だ。いかにも昔の本らしいのは、書名の漢字だけではない。単行本巻末に松本清張賞の選評がご丁寧に載っている。選考委員が阿刀田高、井上ひさし、佐野洋、津本陽、藤沢周平といったお歴々。この人たちの文章もちゃんと読めるのだから、お得感がある。本書には3本の中編が収録されている。すべて南部のマタギたちを主人公にしたものだ。表題作は薩長軍に与することになった秋田藩を敵である南部藩のマタギたちが先遣隊として探索する物語である。南部マタギとして敵の陣地に忍び込むにあたり、「マタギ同士の信義」を重んじ前もって秋田マタギの頭に挨拶に行くくだりはちょっと驚く。文体が重厚で、やたらと漢字が多く、どちらかというと読みにくい文章なのだが、そのリズムに慣れるとグイグイと引き込まれしまう。ユーモアも随所にちりばめられていて息抜きもできる。

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