Vol.528 10年12月11日 週刊あんばい一本勝負 No.522


久しぶりの東京、そして健康診断のこと

久しぶりで2泊3日、東京の旅。何かと難癖をつけ、できるだけ東京にはいかないようにしていたのだが今回は完敗。どうしても行かなくてはならなくなってしまった。出版を緊急に希望する方々と直接会う必要が生じたためだ。
その約束をこなし後は自由時間。夜は友人たちと酒盛りをすることぐらいしかない。これがよくないんだなあ。日ごろ節制している(つもり)なのに、これで一気に体調を崩してしまうからだ。自制がきかなくなり暴飲暴食に走ってしまう。だからといって早々とあの狭い窮屈なホテルのベッドに直行するのはとても無理というもの。今年自宅の寝室をリフォームして居心地良くなってからは、いっそう外に泊まるのがおっくうになってしまった。
飲食に関しても秋田では外食がめっぽう少なくなっているのだが、華やかな都に出ると田舎者は身も心もメロメロになってしまう。酒や食べる量をセーブしようと思っても楽しくなると異郷の地のせいもあり、最後までガンガン行ってしまう。体重が確実に1キロは増えている。

秋田に帰ってくると恐怖の健康診断書が届いていた。
所見にはびっしりと専門用語の文字が羅列されていた。この診断書に書き込まれる所見の文書量が年々多くなっている。眼から腹から心臓、コレステロールに潰瘍疑惑までてんこ盛りだ。なぜか要再検診の表記はない。それが救いだが、もしかして「要検診マーク」は廃止されただけなのかもしれない。
健診の時、血圧は138の75。心の中で「やったぁ」と思ったのだが、看護師は冷たかった。「去年から130以上は高血圧と認定されます。気を付けるように」。エッ、138でもダメなの。おれのおやじなんか、いつも170,180台で、下がった上がったと騒いでいたぞ。納得いかないなあ。

それにしても健診の時期がちょっと悪かったなあ。ちょうど体重が増えつつあるときで、おまけに出版トラブルを抱えてふさぎこんでた時期と重なってしまった。せめて心晴れやかな心身での健診なら、結果が悪くてもそれなりに納得できたのだが、人生そううまくはいかない。めぐり合わせの悪さを呪ってもしょうがないか。

東京で酒飲んでハイになり、帰ってきて健診所見でガックリ落ち込んで、いいことと悪いことが1日に何度か複雑に入れ乱れ交錯する。ま、人生こんなもんでしょう。いつ死んでも誰にも不思議に思われずに、すんなりと受け入れられる年になったのだから、外見だけでも悠然と、生きていくしかありませんね。
(あ)

No.522

明るい原田病日記
(亜紀書房)
森まゆみ

宮城県のある町に森さんが土地を求め、半農半執筆のような暮らしをしている、という噂話は森さんと親しい人から聞いていた。でも、こんな重篤な病を患っているとは知らなかった。本書では、突然奪ってきた「失明の恐れ」のある難病と向き合う闘病記である。でも、ちゃんと森ワールドに明るく染められていて、憂鬱だったり、深刻だったり、悲観的過ぎたりしない読み物になっている。「私の体の中で内戦がおこった」というサブタイトルもいいですね。 驚いたのは版元だ。亜紀書房というのは私たち団塊の世代にとっては懐かしいというか、ずいぶんお世話になった過激な左翼系の出版社である。このところ出す本の傾向がずいぶんと変わりつつあったのは知っていたが、森さんの本を出すとはなあ。前々から別の出版社で森さんの担当者だった編集者Aさんが、亜紀書房にトラヴァーユしたためである。たぶん、それだけの理由だ。そのへんのことは本書で一切触れられてはいないが、ほぼ間違いないだろう。業界では有名なAさんの名前がたびたび本文には登場するからだ。作家というのは不思議だ。出版社という会社ではなく、編集者という個人と行動を共にする生き物なのだ。

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