Vol.558 11年7月23日 週刊あんばい一本勝負 No.552


地震日記19 ようやく鳥海山

7月17日(日)秋田でひっそりと山歩きする身には、一大イベントといっていい鳥海山祓川・康新道ルートを土曜日登ってきた。青息吐息で山頂に立つことができたが、下りは古傷の右足くるぶしが痛み出し、一人遅れ、みんなに迷惑をかけてしまった。まだ自分の実力では鳥海山は敷居が高いのかも。帰りの車中で山行の印象を訊くと、そろって「大満足だけど、二度と行きたくない」って、みんな正直だなあ。これで今年の夏の最大のイベントも終った。この暑さなので、もう当分山歩きは無理。低山歩きなので、これもやむを得ない。

7月18日(月) 鳥海山に登った翌日はあわただしく山形へ。1泊2日の出張旅行。2つの用事をこなしてきた。帰りの車中、酒田側から鳥海山を眺めながら一昨日のささやかな登頂の達成感をずっと反芻していた。いまだ首裏が日焼けでヒリヒリするのも、あの山のせいだ。秋田側からみるのとちがい雪渓が小さいのは南に面しているからだろうか。今日はこれから「山の学校」の行事で「ホタル鑑賞会」。少し忙しぶっているので、火照った「心身」を暗闇の中に身を置いてクールダウンしてくるつもり。今週は3冊の新刊がまとめて出来てくる、やっかいな週。

7月19日(火) 昨夜のホタル観賞会は楽しかった。といってもホタルが沢山見られたからではない。ホタルは少なかったが、夜の闇の中を歩いていると、いろんな発見があったからだ。星のこともずいぶん覚えた。北斗七星のひしゃくの端っこを伸ばしていくと北極星があり、そのまた横にカシオペアが……といった耳学問を実際に確かめることが出来た。暗闇って、とにかく動物の匂いがして生温かい感触がある。

7月20日(水) 今日から熱い暑い1週間がはじまる。新刊が3冊できてきて夜の飲食が3回、週末の山行が暑さでひとまず延期されたのだけが救いだ。体調を崩すのが一番心配なのだが、こんなときに限って飲食の機会が多くなるのは、どうしたことか。さらに今すぐに読みたい何冊かの新刊が枕元に置いてある。この誘惑に打ち勝ってちゃんと睡眠時間を確保できるのか、それも自信がない。8月刊行目指して書き継いでいる『ババヘラの研究』という自分の本の大幅な書き直しも今月中に仕上げなければならない。孤立無援、四面楚歌なんて気取ってもしょうがない。なるようになれ。

7月21日(木) 暑中お見舞い申し上げます。今日はその暑さにちなんだ「ご自慢の1品」を紹介します。これは夫を誉めたことのないカミさんに「よくやった!」と手放しで誉めてもらったアイスキャンデー「クリーム仕立てのミルクバー」(森永)105円。香料が入っていない昔のミルクキャンデーの中に上品な練乳ソースが入っている。くどい甘さがなくて絶品のうまさ。どこのコンビニでもあるわけではないんで根気強く店を探す必要がある。小生はその店を発見、常に在庫を切らさないよう店員を「指導」している。切らすとカミさんに怒られるからだ。昨日は「森吉カギ事件」で助けてもらった友人夫妻を招待し焼肉店へ。

7月21日(金) 歌手らしき芸能人が結婚披露宴で新婦に「地球の裏側の人を思いやれる人になろうね」と訳のわからないコメントをしていた。自分のいる場所が「表」でそれ以外は「裏」と思っている心根がそもそも「思いやり」を決定的に欠いている。海水浴場でバーベキュー、熱中症になった、という若い女性と遭遇した。彼女はいま話題になっている熱中症のニュースや警告など関心外だったのだろう。若さとはなんと無残でバカなのか。でも40年前の自分もこのバカたちと同じだった、と気がついて、うなだれるしかない。

7月22日(土) 真夏のクソ忙しさは8月前半まで確実に続きそうだ。昨日は前半の小さな山を越し一息。夜は気分を替え、夏目漱石『三四郎』を読む。ところが冒頭、汽車で上京するシーンで三四郎は弁当やゴミを2度も窓からポイ捨てする。本題とは何の関係もない場面だが、そのあまりのさりげなさに、今の子供たちが読んだらどう思うだろう……と埒もない横道に迷い込んでしまった。けっきょくそのせいで物語に入って行けず、今夜再チャレンジする予定。古典ってこんな楽しみ方もあるんですね。
(あ)

No.552

ヤマノミ
(NHK出版)
国分拓

NHK・BSで同名番組が放映されたとき、おもしろそうなので録画しておいた。録画はしたのだが、なかなか観ようという気が起きず、つい最近、ハードデスクから消去した。消去して数日後、何かの本で本書のことを知り、かつ大宅賞もとったことも知り本を手に入れた。本を読んだら今度はテレビ番組を無性に観たくなった。タイミング悪過ぎだなあ。本書は07年から08年にかけて4回にわたってアマゾン奥地に入り込み、いまなお原始の生活を続けるヤマノミ族の集落に同居取材したNHK取材班のルポルタージュである。ヤマノミ族はブラジルとベネズエラにまたがる広大な森に生きる先住民、推定2万5千人から3万人が200以上の集落に分散して暮らしている。本書ではそのうちのブラジル最北部・ネグロ川上流部の深い森に暮らすヤマノミ族のひとつである、大きな家を取材ターゲットに選んだ。その大きな家(集落)には167人が暮らす。取材班は彼らと同居、同じものを食べ、彼らの言葉を覚えながら150日間に及ぶ暮らしをともにする。これだけ時間とお金がかかっていればルポとしておもしろくない訳がない。しかし、こうしたルポはもう個人のノンフィクションライターでは無理である。経済的に不可能だ。こんな書き手の現実も同時に突き付けられ複雑な気分にもなる。

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