Vol.58 10月6日号 | 週刊あんばい一本勝負 No.55 |
ネット書店は大丈夫なのか |
最近、山形の書店組合の人たちと飲んだとき、「私はほとんどネット書店で本を買うようになってしまって」と詫びると、その中のリーダー的な書店主が態度を急変させ、以後ほとんど口をきいてくれなくなってしまった。その書店主が「自分たちも組合のHPを立ち上げたので、そこから本を注文できるようになった」という言葉を受けての小生の発言だったのだから、なんとも釈然としない。これからリアル書店の役割はドラステックに変わらざるを得ないのは論を待たないが、そんななか今回のネット書店BOLのbk1との合併騒ぎにはおどろいた。やっぱりか、という気持ちも少しはあったが、時を同じくしてアマゾンが送料を無料にし一挙にCDやレコード販売にもグラウンドを広げてきたのとは対照的な出来事である。普段はbk1から本を買うことが多いのだが、このアマゾンの送料無料で小生はほぼアマゾン一点張りになってしまった。戦略的に『送料無料』という切り札をどこのネット書店がいつの段階で『切る』のか、非常に興味深かったのだがやはりアマゾンが先陣を切ったわけである。無明舎や自分個人の経験に照らしても、この送料無料の意味はかなり重いと思う。アマゾンの一人勝ちという偏りにならない方がいいのだが。 (あ) |
パリの海ちゃん | |
もう2年ほど前になるだろうか。事務所に突然若いフランス人のイラストレ―ターとその妻の日本人女性が訪ねてきた。パリに家があり、年の半分は日本を放浪しながら絵を描いているという夫婦で、奥さんの実家が秋田で里帰り中とのことであった。イラストのレベルは高く、サポートしている奥さんも好印象だったので、小舎のような小さなところではなくもっと大手の絵本専門の出版社を紹介してやったのだが、その後は時々しゃれた絵葉書やカレンダーがパリから届くぐらいで、ながく会うことはなかった。いつか自分のところの本にもイラストを描いてもらおうと気にはなっていたのだが、突然、子供が生まれましたというメールが届いた。名前は海(かい)ちゃん。一緒に送られてきた小さな絵本がまた素敵である。とにかくこの2人の作る『郵便にたくした小さな作品』はセンスがよくて惚れ惚れする。いつかこの夫婦の本を作りたいと思っている。 (あ) | |
小さな絵本 | 海ちゃん |
舎内で編集レッスン | |
大きな仕事の山を抜けたからかもしれないが、毎日1時間ぐらいの時間をとって富山と渡部の2人に『編集技術』の伝授をしている。小生自身、編集は誰から教えてもらったわけでもなく独学なのだが、最近一人で何から何までやるのはしんどくなってきて、オビ文一つで一日中どこにも出かけられないような拘束がほとほと苦痛になってきたのがレッスンをはじめた理由である。伝授するほどの編集スキルがあるわけではないので、長年の経験から蓄積した著者や印刷所との「やりとりのノウハウ」を教えるだけである。これまで仕事は実践でやりながら覚えるもの、と特別若い人に指導もしなかったのだが、結局は人に教えるより自分でやってしまう方が早い。そのため自分がやっているうちに後継者を育てないままここまで来てしまったというわけである。ようするに自分で自分の首をしめていたのだ。これからは少し楽をしたい。 (あ) | 応接室でのレッスン |
高校新聞部の取材を受ける | |
5日の夕方、湯沢高校新聞部の人たちが事務所に取材にきた。インタビュー記事を作るのだという。確か何度か高校新聞部の集まりで講演したり、顧問の先生方とも交流を持った経験があるので、そのつながりからかな、とも思ったが小生は湯沢高校の卒業生だし、数ヶ月前「湯沢高校の美徳」(携帯電話の使用禁止)を新聞エッセイに書いたばかりだから、この辺からつながったものだろう。夏には自由研究の中学生の訪問もあったし、高校写真部の審査員も引き受けている。若い人たちと話すのは大人と話すよりは楽しい。今日の生徒さんたちもまじめでさわやかな印象だった。しかし世界で一番嫌いなものを挙げろといわれれば、あのだらしない格好でたむろしている列車通学のクソ高校生たちで、あの光景には殺意すら覚えるときがある。 (あ) | まじめにまじめな高校生の取材を受ける |
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