Vol.581 11年12月31日 週刊あんばい一本勝負 No.573


今年最後の週刊ニュースです。

12月24日 毎年ひっそりとひとりで「今年の私の10大ニュース」を決めている。もう20年以上続けている習慣だが、世の中の大きな流れとは何の関係もない極私的事件簿だ。その余白に感動した本や映画等も付記するのだが、今年はまだそこまで振り返る余裕がない。昨晩、ふと自分の生きてきた60余年で、世界と自分を揺るがす大事件ってなんだったんだろう、と考えた。DNAらせん構造、IT(PC)、ソ連崩壊……あたりはすぐに思いつくが後が続かない。これは面白そうなので年表をみながら真剣に考えてみよう。

12月25日 夜ぐっすり眠られる。これにまさる幸せがあろうか。最近こんなことを強く思うようになった。とにかく夜、本を読みながらコトンと眠りに落ちていけるだけで、いい。それだけで充分だと思う。体調が悪かったり、ちょっとした心配事があったりしただけで、この小さな幸せは過敏で、すぐに影響を受け変調を告げる。睡眠はテレビのアンテナのようなものかもしれない。夢をみない、見ても覚えていない、というのも心身とも穏やかな状態だ。自分の身に起きた体験を分析してみると、そうに違いない。寝起きのいい年末にしたいものだ。

12月26日 夜ぐっすり眠られる。これにまさる幸せがあろうか。最近こんなことを強く思うようになった。とにかく夜、本を読みながらコトンと眠りに落ちていけるだけで、いい。それだけで充分だと思う。体調が悪かったり、ちょっとした心配事があったりしただけで、この小さな幸せは過敏で、すぐに影響を受け変調を告げる。睡眠はテレビのアンテナのようなものかもしれない。夢をみない、見ても覚えていない、というのも心身とも穏やかな状態だ。自分の身に起きた体験を分析してみると、そうに違いない。寝起きのいい年末にしたいものだ。

12月27日 昨日、今年最後の本ができてきた。あとは来年1月と2月に新刊が4,5本出る予定だ。その後のことはわからない。ゆっくりと下山している意識がどこかにある。もう焦ったり極端に不安になったりすることはないが、登山の事故のほとんどは下山中に起きる。これは体験上間違いない。疲労が蓄積し、緊張感が緩み、ゴールを焦り早足になる。心の中ではいつも「下山は注意!」と自分自身に声をかけているのだが、ついつい温泉やビールのことを考え集中力が切れ、切株につまずいて2メートル吹っ飛んだこともある。もっと凄いのは、登るよりも下るのが難しい山がたくさんある、という事実だ。これは山に登った人にしかわからない。

12月28日 今日が大掃除。明日から来年4日までが正月休みデス。お正月中は元旦登山のほかは、いつものように事務所でグダグダ仕事をしていそう。今すぐやらなければならないものはないから、少しはのんびり出来るかも。ここ20年ほど折につけ記してきた、溜まりに溜まった企画メモの整理(99パーセントボツ)とブラジル・アマゾンの旅行記をまとめたいなあ思っている。思っているだけでできるかどうかは分からない。でもこれを逃せばもう出せない、という冷厳な事実も大人だからわかっている。

12月29日 カミさんと近所のお寿司屋さんへ。年1回、年末の恒例行事だ。若いころの寿司は高価なもの、という刷り込みが強く、いまだに一人ですし屋に入れない。入っても注文できるのは玉子とイカとタコぐらい。昨夜の寿司屋は回転寿司の10倍は値が張る高級店。皿もすべて陶芸家・島岡達三のもの。緊張する。おまかせだからイカもタコも出ないが、やっぱりうまい。舌がこの贅沢を知るとやっかいなことになる、と昔から悟って寿司屋には近づかない習性ができたのかも。そんな人の気も知らず、カミさんはパクパク、何の気兼ねもなしに食い続けた。

12月30日 「寝だめ」なる行為から遠ざかって久しい。いや正月休み初日の一昨日は11時間ほど寝た。寝床でグズグズ「起きようか、このままもう少し…」と考えていられるのは至福のひとときだ。カミさんの同意を得た行為なのだが昼ごろ起きだすと、なぜかカミさんの機嫌が悪い。毎日の家事のリズムが狂うのがいやなのだ。翌日からは休みなのに定時に起床。いつものように朝食をとり、ふつう通りに「休日出勤」。仕事場に入れさえすればビデオをみようが読書をしようが自由だが、雰囲気的にはどうしても仕事をしてしまう。仕事場で仕事をしていなければ不安になるのは当然だ。まったく、なんという人生だ。
(あ)

No.574

ここを出ろ、そして生きろ
(新潮社)
松原耕二

著者は絵にかいたようなエリート・ジャーナリストである。TBSの社員で、筑紫哲也のニュース番組ディレクターからはじまり、夕方の報道番組「ニュースの森」のメイン・キャスター、その後は同番組の編集長になり、ニューヨーク支局長を経て帰国後「NEWS23」のメイン・キャスターである。といっても秋田ではTBSが映らないからテレビでこの方を見かけたことはない。もっぱらある人気HPに連載しているブログの、熱心な読者だった。処女作の人物ノンフィクション『勝者もなく、敗者もなく』も読んだが、やはり圧倒的に時事ネタの舞台裏を綴ったブログが面白い。早くこのブログの連載が本にならないものかなあ、と首を長くして待っていた。それが新刊は何と小説である。これは意外だった。それも恋愛小説である。テーマはさすがにコソボやコンゴ、NY、エルサレムを舞台にした国際的なものだが、NGO活動に没頭する日本人女性が主人公というのも新鮮だった。が、舞台が大きくなればなるほど「うそくささ」の度合いが大きくなる。ここを食い止めるためにはディテールを充実させるしか手はない。どうしてもそのせめぎあいの中で「破綻」がでてくる。面白さを優先させるのか、リアリティを大切にするのか、本書もその境目で苦しんだのではないのだろうか。

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