Vol.582 12年1月7日 週刊あんばい一本勝負 No.575


今年もよろしくお願いします。

12月31日 穏やかな大晦日。1年の最後だからと言って格別にやることもない。ここ数日、のどの調子が悪い。熱もだるさもないのだが……。元旦とその翌日も山歩きがある。こんなところでダウンしていられない。ともかくも部屋を換気し、加熱器をかけ、うがいをして、こまめに手洗い。さらに用心深く、市販の風邪薬まで服でいる。なんとも臆病者で自分でもあきれる。快と不快は薄皮一枚、表裏の関係といっていい。薄皮は実は「健康」でできているのだ。この薄皮を維持するために命をかける、わたし。まあ、これで寝込んだりしたら、末代まで笑いものだなあ。よいお年を。

1月1日 元旦も晴れてくれた。天気はよくはないのだが雪がないだけで「好天」なのだ、こっちでは。10時から恒例の「山の学校 元旦登山」筑紫森。雪が深くて、1時間40分かけて山頂へ。汗だくになる。近くの温泉で汗を流す。今年も無事にスタートを切れた。

1月2日 元旦に続き、今日は横手にある金峰山スノーハイク。モモヒキーズの3名での山行。事前情報では元旦に町民登山があり、踏み跡(トレース)がついているので楽勝、とのことだったが、実際にはたった一人の人のトレースがあるだけ。ここでもまた2時間近くかけて山頂へ。近く場の温泉「ゆっぷる」はなぜか若者でいっぱい。

1月3日 今日は昼まで寝ていた。ほぼ12時間眠り続けた。ということはまだまだ体力があるのかな。3箇日で読んだ本は、三浦しをん『舟を編む』、観た映画は『チャーリー』と『フル・モンティ』、年越しは不覚にもBSーTBS『吉田類の酒場放浪記』総集編を最後まで観てしまった。箱根駅伝は見逃したが、ま、いいか。酒をほとんど飲まない三箇日というのも珍しい。宴会酒は好きだが一人酒はほとんどダメ。いつからこんな風になったんだろう。今年はいろんな意味で厳しい一年になりそうな予感がある。

1月4日 若い人がどんな考え方で「現在」と向き合っているのか興味がある。いろんな関連本を読み、地元大学生と交流し、と空しい努力を続けているのだが、よくわからない。昨夜、偶然に大野更紗『困ってるひと』(ポプラ社)を読んだ。あまりのおもしろさに一晩で読了。難病を笑いと勇気に変えてしまった25歳の文系女子の力技とセンスに打ちのめされた。こんなすごい若者がそんじょそこらに転がっているとは思えないが、ある意味、彼女は世代を代表するランナーである。不況の時代の若者、恐るべし。どんな若者論よりもこの1冊が20代女性の本音を垣間見せてくれた。

1月5日 新年早々夢がひとつかなった。昭和30年代前半、実家(湯沢)のそばの駄菓子屋でよく食べたお好み焼きを自分でつくって食べた。小麦粉に小エビと紅ショウガを入れ薄く焼いてソースを塗る。シンプル極まりないこのおやつをもう一度食べたい、というのが長い間の夢だった。一枚では足りず(予想外に美味しかった)もう一枚食べて満足。この駄菓子屋さん、たしか「十銭店」っていう名前だったが、実際の値段は5円ぐらいだったような気がする。母の実家の横手では駄菓子屋のおやつはヤキソバ(横手焼そばの源流ですね)で、ずいぶん都会的だなあ、とうらやましかった記憶がある。なぜヤキソバのほうが格上なのかは不明だが、たぶん上に目玉焼きが乗っていたせいだろう。 卵も高価だった時代の話だ。

1月6日 昨日(5日)が仕事始め。個人的には4日から仕事していたので、なんとなくスムースにスタートが切れた。4日夜は友人が料理持参で訪ねてきた。いつものように事務所宴会でリラックス。今年は仕事的に厳しくなりそうな雰囲気が、確かにある。去年の震災の影響が本格的に出来して零細企業の倒産などが一挙に増えそうな、悪い予感がするからだ。まあダラダラなんとかやり過ごしたいと思っている。とにかく「下山中」には間違いないのだから、急いで下りて怪我をするのだけは避けたいものだ。ゆっくり、周りの景色を楽しみながら、慎重に歩を進めるつもりです。今年もよろしくお願いします。
(あ)

No.575

ポーカー・フェース
(新潮社)
沢木耕太郎

短編小説集にはがっかりしたが、さすが著者である。ホームグランドといっていいエッセイは素晴らしい。これだけの中身の濃いエッセイを書ける作家は限られている、といっていいだろう。過去の2作(「バーボン・ストリート」や「チェーン・スモーキー」)に比べても本書エッセイは特別に面白い。長くこの著者の本を読み続けてきたが、そのたびに驚いたり、知らないことを知ったり、旧来の作家たちとの一線を画した生き方に共感したり、なんやかやいいながらも、ずっと影響を受けてきた。それがある時期から読み方がちょっと批判的になった。たしか作家・檀一雄の奥さんへのインタビューで構成された本を読んだあたりからだ。このころから著者の書くものに有名人や芸能人、親交のある作家たちの名前が頻繁に出てくるようになった。逆にいえば日本の有名人たちも沢木耕太郎ファンが多いのだろう。でもこの著者には私的な流儀があり、そうしたプライヴェートな事柄を極力排除するか、名前を出すような安易な事はすまい、と勝手に思っていた。だから意外というか少し驚いたものだ。本書にも何人かの有名人が登場する。いくら若づくりの作家とは言え還暦を過ぎた作家である。それもやむを得ないのかもしれない。

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