Vol.60 10月20日号 週刊あんばい一本勝負 No.57


飯塚俊男さんの記録映画

 『菅江真澄の旅』という記録映画を撮っている飯塚さんとそのスタッフの方々と一夜、お酒を飲んだ。飯塚さんは故小川伸介監督のもとで制作、助監督などを勤めた人で、小川プロ全盛のころから秋田での上映会を通じての知り合いで、かれこれ30年のつきあいである。92年に独立して『小さな羽音』というチョウセンアカシジミの記録映画で文化庁優秀映画作品賞を受賞、その後も「三内丸山」や「漆の世界」など地味ながらも資料性の高い映像を撮り続けている。若いころ、小川プロはほとんど無給だったので生活費を捻出するのに苦心している飯塚さんを見ているので、会うと「ちゃん生活してますか」などと失礼なことを聞いてしまうのだが、いつまでも若々しく元気な飯塚さんを見ているとうれしくなって、ついついお酒のピッチも上がってしまった。しかも今回の作品は紀伊国屋書店がスポンサーになっているのでお金の心配はないようで一安心。クランクアップは来年8月とのこと。期待して待ちましょう。
(あ)

左から三人目が飯塚さん

山平重樹さんと故・阿部勉

 ヤクザや右翼ものを専門とする作家の山平重樹さんが事務所に訪ねてきた。角館出身で先年若くして亡くなった元「楯の会」会員で新右翼「一水会」のメンバーでもあった阿部勉さんの生涯を本にするため取材にやってきたのである。阿部さんとの思い出話など2時間半ほどお話したのだが、小生は何冊か山平さんの著作を読んでいる。個人的には「暴力団や右翼について書き続ける作家」におおいに興味があったのだが、すぐに東京に戻らなければならないらしく、その辺の四方山話はうかがうことは出来なかったのが残念である。空港まで送っていく車中、山平さんは「ものすごく知的レベルの高いヤクザや人間的魅力にあふれた右翼なんかがまだまだいるので、なかなかこの世界から足を洗えないんですよ」と笑っていた。山平さんの著書は新しいところでは『21世紀のヤクザ基礎知識』、『愚連隊の元祖万年東一』『実録アウトロー列伝横浜愚連隊』などがある。山平さんが書く「阿部勉」、これは面白いものになるのは間違いありません。
(あ)

増刷「道の駅とうほくガイド」

 「道の駅とうほくガイド」の増刷が決まりました。初版の執筆を担当した関係で今回も私・柴田真紀子と鐙が、新しく登録された「道の駅」や追加取材の必要な「道の駅」に取材に行くことになりました。今回、2泊3日でまわったのは、青森と岩手の道の駅12ヵ所。鐙が撮影、私が取材という役割分担で、ひとつの「道の駅」をだいたい1時間で取材することができました。1日目は気持ちのいい晴天で、途中、海辺の店で干したタコを買って食べたり、市場をのぞいたりと楽しみながらの出張でした。「道の駅」の取材でうれしいのは、「一押しの商品は何ですか?」と聞くと、特産品のくだものやお菓子などを見せてくださったあと「どうぞ食べてみてください」とおみやげをもらえることです。役得というやつですね。残りの宮城と秋田も役得目当てに頑張ろうと思います。
(柴)

「道の駅」取材中

今週の花

 今週事務所を飾っている花はカスピア、クルクマ、トルコギキョウ、リトルマーベル、ガーベラ、ヒペリカム。花屋さんからは知っている花、初めて見る花、いろいろ届きますが、今回特に気になったのはクルクマです。調べてみたところ、和名はキョウオウ(薑黄)。ショウガ科ウコン属の植物でインドに野生しているそうです。そうと知って突然、ガンジス川のほとりにこの花が群生してる場面を想像しました。本当にそんな景色があるかどうかわかりませんが、いつかインドに行ったとき、この花を探すという楽しみが増えました。
(富)

中央のカスピアの陰に隠れ
ている白い花がクルクマ

No.57

A・ランシング(山本光伸訳)(新潮社)
エンデュアランス号漂流

 落ち込んで、鬱屈した日々が続くと元気の出る本が読みたくなる。96年に急逝した写真家の星野道夫さんのすすめで日本語訳が出たという「いわくつきの」本書を読んでみた。事件そのものは100年も前に起こったことであり、それがアメリカで本になったのも40年も前のことである。(他の版元からも別の訳者で出ているらしいので不用意なことはいえないが)。イギリスの探検家シャクルトンの南極大陸横断はその途上で船が氷に押しつぶされ漂流を余儀なくされる。食糧不足や極寒、病気などの過酷な試練を乗り越えながら28名の隊員たちは17ヶ月に及ぶ極限の旅を経て、奇跡の生還を果たす。息もつかせず読ませるのは、事実のすごさもさることながら、彼らが当時つけていた日記に寄り添って「漂流」以外の背景や彼らの家族、個人的な過去の物語などを極力排除している点である。それが読者を混乱や感情移入から遠ざけ、物語に集中しやすい舞台を作り上げている。

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