Vol.602 12年6月2日 週刊あんばい一本勝負 No.595


金曜代休とひとり料理教室

5月26日 前々から昨日は「好天」の予想だったので、S夫妻と3人で鳥海山「雪渓ハイキング」。金曜なので臨時休暇である。ところが曇天で午後からは雨がばらつきだした。それでも鳥海山・祓川から八合目避難小屋までアイゼンを付け、小さなクレバスとピップスキーをぞんぶんに楽しんできた。三時間半ちかく雪山を堪能し午後遅くに帰社しフツーに仕事までした。日帰りでクレパスのある雪山に遊び、午後からは仕事ができる、というのはなんとも贅沢な環境、と思いたい。他と比較しても意味はないのだが、都会に住む人たちへの圧倒的なアドバンテージである。もちろんネイティブ(地元民)たちは誰もそんなことをアドバンテージだと思っていないのだが。

5月27日 プロ登山家・竹内洋岳の偉業は読売以外の各紙でも大きく報じていた。うれしいね、当たり前のことだけど。その一方で、時代小説作家・花家圭太郎さんが亡くなられていた。全く知らなかった。この人の書くエッセイは本当に面白かった。いつかお会いして本を書いてもらおうと思っていた方なので、死去の報にうろたえてしまった。ご冥福をお祈りしたい。
日曜日は事務所を一歩も出ず、ひたすらひとり料理教室。カレーライスに寒天、蕎麦の出汁作りから玉子焼きまで、いろいろと挑戦するが、自分のセンスのなさに、なんとも閉口。基本的に不器用だし、面倒くさがりだし。

5月28日 夜は10時前に寝て朝は5時前に起きる。年なんだから、できればそんな健康的な生活をおくりたい。でも習慣となった「夜更かし」だけはいかんともしがたい。日付が変わってもしばらくはモソモソ、グツグツ、いっつも眠りに付くのは1時前後。で起床は7時台、という生活をもう何十年も続けている。朝ごはんは7時半、起きてすぐご飯を食べることになるから身体的にはかなり負担で、最近はご飯がうまくのどを通らなくなった。つっかえるのである。そこで朝ごはんはしばらくパスすることに。もう半月がたつが、そのせいか体調は、すこぶるいい。いわゆるブランチ(朝昼兼用)なのだが、今度は快調だった便通がイマイチに。朝の便通に一番効果的なのは朝ごはんを食べることだそうだから、あっち立てればこっちが立たず、いやはや悩める日々だ。

5月29日 カンテンづくりに夢中。昔からカンテンが大好きだった。秋田県南部では祝いの席などで必ずカンテン料理が出る。今も横手を中心にカンテン料理はポピュラーな食品(おやつ)だ。そうした出自も関係あるのだろう、横手出身の母親がよくつくってくれた。つくるのは超カンタン、でも砂糖の量や硬さ具合まで凝りだすと、ちょっと厄介だ。朝ごはんを止め、ブランチにして便通が悪くなった。これもカンテンの繊維質で挽回してやろう。

5月30日 自分の青春時代を回顧する趣味はまったくない。後ろを振り向く余裕がなかったからだ。和久井光司著『放送禁止歌手 山平和彦の生涯』(河出書房新社)を読んでいたら、はしなくも自分の20代と本の内容が交錯、目がさえ眠られなくなった。あの時代に帰りたいとは思わはないが、同じ時代に、同じ街で、何度か遭遇し、すれ違った男のことを思い出しながら、まるで自分のことを書かれてしまったような気恥かしさと感情の昂ぶり味わった。山平和彦という歌手にけして良い印象は持っていなかったのだが(彼も同じだろうけど)、「時代と共に変わることにしくじった人」(重松清)という視点で見れば、僕らは同じ側に属する人間なのかもしれない。

6月1日 先週に引き続き「金曜代休」。山に行ってきた。太平山旭又コースで今年初挑戦。さすがに人は少なかったが山頂目前で引き返してきた。それが良かったのか、山頂から帰ってきた人が、小熊と遭遇したそうだ。ちょっと会いたかったような気もするが、隠れている母熊が怖い。山頂まで行けなかったのは痙攣で足が動かなくなったため。理由ははっきりしている。最近の習慣でうっかりこの日「朝飯抜き」してしまったためのシャリバテだ。さらに近所の山ということでなめくさって、いつもの痙攣防止の「塩飴」をなめなかった(シャレです)。ここ数日いい本と映画に当たって「寝不足」が続いた……もろもろの悪条件が重なっての失態。今月末は無防備にも谷川岳に行く予定。ちゃんとトレーニングする必要があるなあ。
(あ)

No.595

百姓貴族 1
(新書館)
荒川弘

コミック・エッセイにはまっている。若い女性の何でもない身辺日常を描いたものが主流だが、本書は男の著者だ。「Wings」という隔月雑誌に連載されたものだが、この雑誌のうたい文句は「大人ガールのための、ドラマテック・ロマンテック・マガジン」。やはり女性向けに編まれたもの。オビには「日本初、農家エッセイ登場!!」の文字がある。「農業エッセイ」でないところがミソだ。農業に関するコミックは何点かあるが「農家」を描いたコミックは珍しいのは確かだ。著者の実家が牛飼いで、本人も漫画家になる前の7年間、野菜をつくったり、クマにおびえたり、北海道で農家生活を経験者している。個人的には小舎でも農業もののコミック・エッセイの出版を考えている。だからその参考に買い求めたのだが、このジャンルには可能性がある。実際うちではここ数年で毎年1,2点ずつコミック・エッセイ(らしきもの)を出している。これまで活字本で出したが、まったく芽の出なかった内容のいい農業ものをコミックにしたら……。そう簡単なものではなかったが、コミック・エッセイというジャンルのおかげで出版の可能性が広がったことは事実だ。

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