Vol.605 12年6月23日 週刊あんばい一本勝負 No.598


やりすぎで体調崩すバカ

6月15日 脳性まひの中学生教師であるS君が秋田大学大学院に入学した。昨夜は事務所でその彼の入学祝い。介助役は同大学新聞部のH君とWさん。最初、大学周辺のおでん屋で飲み会を考えていたが、小生、突然「自慢の手料理」を披露したくなり、身勝手にも事務所に会場を変更。若者たちと談論風発、時を忘れた(料理の評判はいまいちだった、がっくり)。みんなでS君を秋田駅まで送り、残った若者2人とさらに駅前居酒屋で2次会。自分が一番しゃべっていたのだからノーテンギなジジイだ。普段あまり人と話さずに過ごしているので、こんな時に反動で思いっきりおしゃべりになる。

6月16日 夜半から雨。まずいなどうも。今日は太平山リベンジ登山の予定だ。2週間前の屈辱を晴らそうと1日の休みもなく筋トレ&ストレッチ続けてきた。その成果を試す日なのだ。まだこの時点では決行か中止か決めていないが、燃えるような闘志に水を掛けられた気分だ。身体は軽いし、昨夜はよく寝られたし、前回の失敗の教訓も頭に叩き込んだ。来週はもう谷川岳、トレーニングの成果を確認できるチャンスは今日だけなのだ。雨が恨めしい。雨の登山ってカッパが蒸れて、うっとうしいからなあ。

6月17日 寒気がする。朝から曇り空で肌寒かった。なのに半そでで朝の散歩を強行、シャワーを浴びて、朝ごはんを食べて、いざ出舎という時に悪寒。2時間ほど横たわったらおさまった。ところで昨日も雨で山はやっぱりダメだった。そのまま車を「山の学校」に移動し、「子供サバイバル教室」に参加、お手伝いしてきた。家に帰ってからは、山に行ってないので筋トレ&ストレッチをした。なんとなくエネルギーをもてあましたせいだ。そして、さして時間が経っていない今朝、またしても筋トレ&ストレッチ。どうもやりすぎかも。これで体調を崩したら笑いもん、と思っていた矢先の出来事だ。どうにも加減がまだよくわからないなあ。

6月18日 朝の散歩でF先生にあった。先ごろ市内の高校長を退職した方でスポーツ・トレーニングの専門家だ。私が湯沢高校の柔道部員だったころ、彼も秋田高校柔道部のエースで、あこがれの存在だった。わずかな時間だったが「なぜ痙攣が起きるのか」「実効的なトレーニング法」の幾つかを教えてもらった。プロの言葉には説得力がある。連日の朝トレで身体はかなり疲労している。でも休まずに続けているのは、アクティブレスト(積極的休養)というスポーツメンテナンスの本(山本利春『疲れたときは、からだを動かす!』(岩波書店)の影響だ。疲れた時ほどストレッチと筋トレは疲労回復に効果がある、とその本には書いてある。ま、試行錯誤しながらいろいろやってみるしかない。

6月19日 朝トレに切り替えてから最も変ったこと。朝ごはんをちゃんと食べるようになった。シャワーを浴びるので入浴は2日に1度。夜10時にはベッドに入るのでテレビを観なくなった(DVD映画も含む)。夜が短くなって時間の余裕がないのだ。でもテレビを観ない分、本はよく読むようになった。午前中にあらかた仕事を片付けてしまえるから、午後から自分の時間がつくれるようになった……と、まあこんなところか。最も難儀(しんどい)なことを朝一番に片付けてしまうので、そのあとの長い1日を余裕持って過ごせる。これがもっとも大きな収穫かな。

6月20日 新刊でもない本が突然売れ出す、ということがある。最近では大塚弓子『ミラクルガール』がNHKテレビ「グラン・ジュテ」の放映でブレーク。もう3年も前の本だ。今週は週刊朝日のコラムで2ページにわたって内舘牧子さんが坂本梅子詩集『いろはにほへどちりぬるうを』を取り上げ、最大限の賛辞で褒めてくださった。10年前の詩集である。おかげで電話やメールで注文が殺到しているのだが、実はほとんど在庫がない。詩集なのでほんのわずかしか刷っていないのだ。えてして人生はこんなもの。内舘さんはコラムの中で無明舎の名前を2度も使ってくださった。これで知名度はずいぶん上がったかも。感謝である。

6月21日 理系の人には笑われそうだが、宇宙のブラックホールというのがどんな「形」をしているのか、いつも不思議に思っていた。恥ずかしくて誰にも聞く機会のないまま還暦を迎えたのだが、先日NHK「コズミックフロント」でブラックホールのことを丁寧に解説していた。ウンウンそうだったのか。でも理系の人たちよ、こんなこと知ってる。宇宙の小惑星には大江健三郎とか江戸川乱歩とか宮沢賢治といった文学者の名前が付けられた星がたくさんあるってこと。小舎の著者でもある塩野米松さんも国際天文連合から作家活動をたたえ「YONEMATSU」という名前が小惑星11987にあたえられている。知ってた?
(あ)

No.598

下り坂では後ろ向きに
(岩波書店)
丘沢静也

本書は、だらだら走ったり、のんびり泳いだりしながら、「運動」習慣病になろう、というエッセイ集。本業はドイツ文学の先生だが、著者の副業(?)の産物はこのフィットネス本だ。数年に1冊のペースで、こうした本を書いている。出れば買ってしまう大好きな本である。本書でフィットネス本は4冊目。自慢ではないが過去の3冊のフィットネス本もすべて読んでいる。この著者の本の欠点は、後半にかかるとフィットネスの記述が少なくなり本業のドイツ文学や硬めの評論に走ってしまうところ。4冊の本すべてにこれは共通している悪い癖だ。本書でも後半はややだらけてしまった(こっちの寄り道のほうが好き、という人もいるようだが)。はなっからフィットネス本にしようという気がないのかもしれない。著者の主張は一貫している。「からだ」は大きな理性であり、知恵であり、教養である。ゆっくり、目標を持たず、競争をしないで楽しもう。これが著者の提唱する「静かなスポーツ」の基本姿勢。随所に専門分野のニーチェやゲーテの言葉が絶妙な味付けスパイスのようにちりばめられている。スポーツの語源はdisport(気ばらし)、結果ではなくプロセスこそ大事。「たくさん」を望まず、「ちょっと」で満足する。丘沢の本を読んでいると体だけでなく、疲れた頭の働きもリフレッシュできる。

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