Vol.606 12年6月30日 | 週刊あんばい一本勝負 No.599 |
筋トレ成果で、どうにか谷川岳 | |
6月23日 久しぶりに4泊5日の「旅」。酒田、群馬、長野といったあたりをうろつくことになりそうだが、けっこう緊張している。というのは地道に築きあげてきたこれまでの「日常」が壊れるのが怖いから。10年ほど前までは、毎月2,3度、3〜6日ぐらいの出張は当たり前だった。ひと月に4,5回飛行機に乗るのもフツーだった。めっきり外に出なくなったのは、メールでほとんどの意思疎通ができるようになったことが大きいが、もっと大きいのは、こちらの立ち位置が変化したこと。非日常より日常が大事、というスタンスのほうが強固になった。老化という人もいるだろうが、そうかなあ。今の自分にとって大事なことを優先する。素直にそのことに従えるようになった、と自分では思っている。非日常は心身をくたびれさせるだけだ。 6月24日 ウディ・アレンの『結婚記念日』は何回も観ている大好きな映画だ。ロスのデパートで展開する一幕コメディの会話劇で、これ以上の映画はない、と思っていた映画だが、イラン人監督アッパス・キアロスタミの『トスカーナの贋作』を見てびっくり。男と女がトスカーナの街をうろつきながら「夫婦ごっこ」する、これも会話劇の映画だった。女は名優ジュリエット・ビノシュ、男は映画初出演のオペラ歌手ウイリアム・シメル。最後はホテルのトイレで男が魔か不可思議な表情で放尿するシーンで終わる。どこまでが現実で、どこからか嘘なのか、洒脱な会話に惑わされているうちにわからなくなる。心に残る映画だがキアロスタミの次回作の舞台は日本だそうだ。楽しみだなあ。 6月25日 酒がすっかり弱くなってしまった。晩酌でカミさんに付き合って一杯やるのが夕食の「決まり」なのだが、酒のセレクトは小生の受け持ち。日本酒、ワイン、焼酎とその都度、肴によって替える。それはいいのだが飲む量がカミさんの半分以下(日本酒おちょこ1杯、ワインはグラス1杯)。ときには酒はけっこう、と思える日も多い。そのくせ学生たちとの飲み会では昔のようにがんがん飲んだりする。どうなっているの。酒ってけっきょくコミュニケーションの「肴」なのかも。そうか、カミさんとはもう会話がないってことか。 6月26日 下り坂の人生だ。そのことは自覚しているが、フィジカルの面ではこれまでの人生になかったほど、ワイルドで規則正しく、ハードな筋トレ・ストレッチ&散歩の日々である。「下り坂のくせに、そんな無理しなくても」とはカミさんの小言。上りであろうと下りであろうと人は目標ができると強いノダ。今年は秋田最強の山・鳥海山を「軽々と」登りたい。軽々と、というのはオーバーか。あの山は何度登っても下山時にヘロヘロになる。行きはよいよい、帰りが怖い、なのである。これを今年はなしにしたい。今日はスクワット100回に挑戦、文句あるかッ! 6月27日 昨夜、小旅行から帰ってきた。谷川岳はロープウエイが運休中でマチガ沢から歩いて、両耳ピークを踏破、西黒尾根を下山してきた。12時間歩き通しのきつい山だった。なんだか自分の限界点を超えたような、気もする。でも下山で完全にばてた。仲間に迷惑をかける寸前まで「息が上がっ」てヨレヨレで下山。筋トレ効果は確実にあったが、下山の体力までは想定外だった。神室山を急勾配にして大きくしたような山だった。ロッククライマーたちの伝説の一の倉沢も初めて観た。文字でしか知らなかったから、ウルウルと感動してしまった。そうか、ここで数多のクライマーたちが命を……。今日からさっそくまた朝の筋トレ・ストレッチを再開。鳥海、神室、焼石、虎毛、行きたい山は県内にもたくさんある。 6月28日 谷川岳登山の後、長野の松代町を訪ねた。太平洋戦争の遺跡である「本土決戦最後の拠点」ともいわれる「松代大本営跡」を前から見たかったのだ。と同時に松代は真田家10万石の城下町。城跡や文武学校も見学。いまだ現役で小学校の授業に使われている文武学校に「長野県民の学問好き」の原点をみた。それにしても「大本営」である。戦争中、この町に天皇や学習院、大本営や政府各省を移そうとした軍部の「狂気」を、生で見た衝撃は小さくない。いたるところから感じられる追い詰められた人間の「狂熱の残滓」が、胸を締め付けてくるのだ。戦争は嫌だね。 (あ)
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