Vol.609 12年7月21日 | 週刊あんばい一本勝負 No602 |
さびしい人生を楽しく行きたい | |
7月14日 ここ数日、ある秋田に関するブログをプリントアウトして読んでいる。A4コピー用紙で400ページ以上、原稿用紙(400字詰め)換算なら1500枚くらいか。友人に薦められたものだが辛辣な秋田論というかバッシングで、確かに面白いのだが、読んでいると少々辛くなる。自分の住む「ふるさと」を悪しざまに言うのは容易だ。上品でセンスのある都会の老婦人と、秋田に住む貧相な自分の母親を比べ、なんて品もセンスもないんだと親を面罵するような、なんというか後味の悪さを感じてしまう。故郷を批判するのは自分の母親をこき下ろすのに似ている。こんなふうに思うのは私だけだろうか。 7月15日 夜半からものすごい雨。今日は「谷川岳後遺症」払しょくのためにも、なんとしても山にチャレンジしたい、と「悲壮な決意」をしていたのだが……。どしゃ降りだけれど、ダメもとで、とにかく山の麓まで入ってみよう。「やめよう」とおもえばいつでもやめられる。無茶だけれども前に進もうという気持ちを、最近ははなっから手放してしまう。老化というか、そんな体たらくに自分自身うんざり。雨で泥まみれで山に登ったっていいじゃないか。そのあとの風呂は気持ちいいぞ。気持ちを奮い立たせて、これから山に行ってきます。 7月16日 やっぱり昨日の山は無理だった。森吉山に行く予定だったが変更して太平湖・小又峡の観光コース。ここも増水で滝までは行けなかった。早々と退散。帰ってきて、まだ明るいうちから駅前居酒屋で宴会。いろんなものを食い散らかして溜飲を下げた。というか憂さを晴らした。今日の朝は何となくすっきり。山はしばらくお預け、仕事に集中しよう。ところで陶芸もやるSシェフに「注文」(依頼)していた「大ぶりの猪口」ができてきた。これがなかなかいい。大きさが注文通り。いや、エラソーに「注文」などといってしまったが、Sシェフにタダで好意でつくっていただいたもの。申し訳ない。 7月17日 今週はまとまって数日間休みがとれそうだ。どこか県外に出かけようと思うのだが、無目的な旅は計画の段階で挫折が目に見えている。面倒くさくなってしまうのだ。山はとうぶん控え目、仕事も暑いうちはヒマ。旅も億劫となると、せっせと筋トレに励んで夜はいろんな人たちとの一献だけが楽しみ。夏の酒はなぜか好きだ。ナスがっこにうまき(ウナギの玉子焼き)、くじらかやきに冷ややっこ、こんな肴でやる冷たい酒は堪えられない。先日大ぶりの猪口をSシェフに依頼したのは、日本酒に氷を浮かべて飲むためだ。生のままの日本酒ではちょっときつすぎるからオンザロックなのだ。 7月18日 芥川賞と直木賞が新聞に発表されていた。知り合いや愛読している作家が獲ったのなら別だが、もうほとんど何の関心もない。先日、機会あって40年以上前の芥川賞作品『北の河』を読んだ。舞台は秋田なのだが、どこがいいのか正直よくわからなかった。それでもその後、高井有一の作品を何冊が読み続けた。そして『夜の蟻』でストンと、この作家のとりこになってしまった。もうまるで小津の映画を観ているような世界だ。それにしても、こうして過去の作品をアマゾン・ユーズドでほとんど1円で買えてしまう現実を、自分の中でどう位置付けたらいいのか、まだ折り合いを付いられないでいる。 7月19日 仕事がヒマなうちにいろんなことをしておきたい、と気持ちばかりが焦る。あそこに行きたい、この本を読んでおこう、出したい本の企画準備を、観たい映画のリストアップ、会いたい人とのアポも……で、けっきょくは何もしない。朝の筋トレ散歩に午前中のルーチンワーク、午後からはぼんやり資料を眺め、PCの前で無為の時間。夕飯後はテレビの野球観戦で、終わると本を読む気力もなくバタンキュー。この繰り返しの日々。私の1日は朝の筋トレ散歩とシャワーが終わった時点で、もう終了。起きて2時間で1日が終わりなのだ。あとは余録のようなもの。なんとさびしい人生か。 7月20日 無明舎をたちあげたのは1972年9月、「古本・企画・出版」という冠を舎名の前につけていた。古本屋がメインでアングラの呼び屋のまねごと、ミニコミ誌も発行した。それから40年経ったわけだが、出版専業の「無明舎出版」に改組したのは76年なので、これを正式な創業と考えれば、まだ35年しかたっていない。取り上げるメディアの扱いはおおむね後者の76年創業のほうだ。でも「創業72年」のほうに個人的にはこだわりがある。この年がすべてのスタートで「76年」はあくまで改組にすぎない。だから今年が創業40周年なのだが、私以外は「76年40周年」のほうに与する人が多い。創業者としては「72年説」に固執しているのだが、どっちにせよあまり意味はないか。 (あ)
|
●vol.605 6月23日号 | ●vol.606 6月30日号 | ●vol.607 7月7日号 | ●vol.608 7月14日号 |