Vol.62 11月3日号 週刊あんばい一本勝負 No.59


神保町ブックフェステバル

 今年も神保町の本祭り(第11回)が10月27日、28日開催された。前日、息子と会う約束があったので東京に出たついでに、「書肆アクセス」のあるすずらん通りの「本の得々市」を冷やかしてきた。いつものように「地方出版」のブースは首都圏出版人懇談会の人たちが売り子で、酒を飲みながら声を嗄らして「汚損本」を売りまくっていた。夜は彼らの打上げには加わらず(最近大勢で飲むと疲れるため)、神保町の路地裏の酒場で「アルメディア」の加賀美さん、川上賢一社長の3人でしんみり飲む。家庭のこと、老後のこと、出版の明るくはない未来の話、それぞれの会社のことをしっとりと話していると、妙に心が落ち着く。みんな同じ年代で置かれている身辺の状況も似たりよったり、考えてみれば秋田にはこんなことを話せる友人はいない。神保町にはしんみりと酒の飲める酒場がたくさんあり、仕事のことを話せる仲間たちがいる。
(あ)

フェステバルは明大の応援団とチアガールの行進で開幕。

米子の今井書店の塩見さんと

世の中どうなっているの?

 「戦争は新聞とテレビのなかだけです。こちらはバスも飛行機も普通どおり動いています。こんなときだからこそ、ぜひいらして下さい」。沖縄ボーダーインクの宮城社長からのメールである。今年の舎員旅行は沖縄に決めたのだが、例の同時多発テロでなんとなく行きそびれていた。恐る恐る宮城さんに県民感情などのお伺いを立てたら、このお返事である。メールをいただいて11月中旬に沖縄に行くことを決めた。
 私たちは知らず知らずのうちにマスコミ報道に過剰に反応し、真に受け、もろに影響を受けている。踊らされているといってもいいかもしれない。
 先日、東京へ行くとき、飛行機は満杯でホテルもほとんど満席だった。夜に食事した表参道のブラジルの焼肉レストラン「バルバコア」にいたっては狂牛病などどこ吹く風、1時間待ちの大盛況、外国人でごった返していた。どこもかしこも閑古鳥が鳴いている、とメデイアは言っていたではないか。マスコミ報道とはかけ離れた現実世界がそこにはあった。
(あ)

ここが「バルバコア」

CD−ROM版「秋田のことば」ただいま録音作業中!

  現在、CD−ROM版「秋田のことば」の録音作業が進行中です。秋田県教育委員会が募集した県内各市町村の声の出演者約120人に「朝、近所の人に会ったときの挨拶は?」「失敗してしまったとき、つい言ってしまうことばは?」「好きな秋田のことばは?」などの質問をして、普段使っている秋田弁で答えてもらうのです。
 応募者を訪ねて行くと、家族や友人と相談して、昔使っていたことばを思い出しながら録音に備えている人や、普段ほとんど共通語しか使っていないためスッと出てこない人などさまざまです。比較的若い人は、おじいちゃんおばあちゃんが話す秋田弁は理解できるけど、自分では使わないというのが現状で、さらに小学校で秋田弁の民話の読み聞かせをしても、面白くて笑っているのはお母さんたちで、小学生は何を言っているのか理解できない、という話も聞きました。
 この作業を始めるまでは正直なところ特に秋田弁に愛着を持っていたわけではなかったのですが、こんな状況をまのあたりにすると、少し寂しい気がします。
 写真は、一緒に録音作業をしてくれている金谷さんが、応募者のお話を録音中の模様です
(富)

岩手・滝の下の露天風呂で

  来春刊行予定の『岩手の公共温泉』のカバー写真撮影のため岩手県に行ってきました。岩手山の山頂がきれいに見える天気の良い日で、絶好の撮影日和でした。撮影場所は御所湖側にある繋温泉、岩手山の網張温泉、ぬくもり温泉の3ヶ所です。
 網張温泉「休暇村岩手」の露天風呂・仙女の湯は、建物から山道を5分ほど歩いた滝の下にある岩に囲まれた乳白色のお湯でした。前回の冬、人気アイドルグループ「TOKIO」の一人がテレビ番組「鉄腕DASH!」の収録で雪をこいで入りに行ったそうで、そう言われれば確かにそのシーンを観た覚えがありました。雪が積もると閉鎖になる露天風呂ですが、今年の冬からはそれをヒントにスノーシューを履いて行く仙女の湯というイベントを期間限定で企画しているそうです。公共の温泉も、このぐらい商魂たくましくなければ、やっていけません。いいカバー写真が撮れました。
(富)

No.59

熟女の旅(ポット出版)
松沢呉一

 前回の「食卓で会いましょう」(岩松了)に引き続き同じ版元の本である。いま、ポット出版の本が圧倒的に面白い。よくもまあバラエティにとんだ企画が出来るものだと同業者としてはジェラシーを感じているのだが、ま,一朝一夕にまねできるものではない。本書は風俗ライターとして高名な著者が、題名どおり「熟女専門風俗店を訪ねる紀行」では、ない。熟女風俗というテーマははずさないが、本の切り口に何十もの仕掛けがなされた「妙な本」(著者)なのである。主人公は意外にも熟女ではなく著者の担当編集者(風俗雑誌の)である長田君という青年で、彼が狂言回しとしてきわめて重要な役割を演じる仕組みになっている。それが異質の輝きと質の高さを獲得している要因だろう。はじめてこのライターの本を読んだのだが、雑誌などでよく登場する「論客」というイメージは間違っていなかった。しかし、論客でしかもこれだけの企画力や構成力をもったストーリーテラーとなると、将来おお化けするかも。

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