Vol.621 12年10月13日 週刊あんばい一本勝負 No.614


紅葉シーズンがはじまった!

10月6日 鳴り物入りで始めた秋田市の巡回バスの平均乗車率が1日6人だそうだ。ズッコけたが、行政のやることだから、こんなもんだろう。行政と仕事をするたびに感じることだが、最初に巧妙な「責任逃れ」のエキスキューズがある。そこがすべてのスタート地点。失敗しても責任は誰もとらなくて済むようなスタイルができあがっている。「問題はあったけど、ともかくやりました」という構えが最初から優先される。それは政治の世界でも同じなので、過剰な期待はしないように自己鍛錬してきたつもりだが、ときに魔がさして、彼らに「期待」してしまう。そしてガックリうなだれるのだが、希望を語ることは重要な未来だ。若者にそこだけは残しておきたいのだが、それも風前のともしびだ。

10月7日 たぶん今週末が最盛期になるだろう紅葉だが、昨日(日曜)、まだ六割がたの紅葉の秣岳(まぐさだけ)をきっちりと堪能してきた。栗駒山のお隣の山だ。山そのものが燃えあがるような紅葉よりは、六割程度の「あざとさ」のない「程々の紅葉」が好きだ。山頂でのお昼もよかった。F校長の昼弁当がサフラン香るパエリアだったのだ。おすそわけしてもらったが美味だった。秣と紅葉とパエリアは一見ミスマッチだが、意外にこれがうまく調和、三位一体で強く記憶に残った。なぜパエリアなの? と訊いたら、 新米の季節なので残った古米を使ったとのこと。この「理由」もお米に精通した秋田の人らしくて、かっこいい。

10月8日 3連休の最終日。おとなしく事務所で仕事。少しは忙しくなってきた。

10月9日 快晴。気分がいい。昨夜はうまく寝付けなかった。ずっと考えている(悩んでいる)心配事があり、最悪の事態を想像して眠れなくなってしまった。でもそれも朝の快晴で文字通り「雲散霧消」。いや快晴のせいというより、あるアイデアを思い付いたら心配事がスーッと消えてしまった。消えてしまうと、「心配事」なるものが、かなりレベルの低い悩みであったことがわかり、そのことに愕然とする。それにしても10月は何かとあわただしい。HPに新連載をやる予定があり、その準備をしなければならない。いっぽうで山歩きは一番いい季節。明日は栗駒・秣の縦走登山の予定だ。紅葉のこの時期は駐車場が満杯になる。それを避けて、あえての週日登山である。お許しください。

10月10日 栗駒・秣岳を縦走する。日頃、週末も働いているから大目に見てね。って誰に謝っているのか。実は山仲間でビデオ機器関連の仕事をしている友人がいて、彼は週末になるときまって結婚式のビデオ撮影の仕事が入る。そのためほとんど山に行けないのだ。彼の無念さを思うとこちらも胸が張り裂けそうになる(ウソ)。それはともかく紅葉のシーズンは毎年こうして週日の山行になる。天気はいまひとつだったが、今年も紅葉の美しい山を歩くことができた。それだけで幸せだ。今週末には白神の紅葉(小岳)も歩いてくるつもり。週3回の山行というのも初体験だなあ。

10月11日 あらためて今夏がすさまじいい猛暑だったことを、しみじみと思い出している。現金なもので暑さが去ると体調は上向き、身体がよく動くようになった。ヒマだった仕事も徐々にだが忙しくなりつつある。顕著なのは来客が増えたこと。人の行動は実に正確に気候変動とリンクしている。でも、こうした自然現象ですべてを「わかってしまう」のも危険だ。例年と同じように「忙しい秋」が戻ってきたようにみえるが、実は去年とも10年前とも確実に微妙に何かが違う。その変化を見逃すと痛い目にあう。細部ではいろんなことが劣化しはじめ、目に見えないほころびから崩壊が始まっているような気がする昨今である。

10月12日 先日、山の帰りに入った東成瀬村の「さわらび温泉」は建物のつくりがシンプルで、浴場もおしゃれ。すっかり気に入ってしまった。町営とばかり思っていたが「簡保の宿」だった。それはいいのだが、家に帰ってから身体から異臭がする。カメムシの匂いだ。そうか露天風呂にいたカメの臭いが身体についてしまったのか。美しいバラには棘がある。2日間でカメの匂いは消えたが、どうにも周辺の匂いが気になってしょうがない。去年、カメの大発生で寝室にまで入られ、数カ月その匂いに悩まされた記憶が蘇ってくる。今年こそカメとは縁を切りたかったのに、山(自然)とカメムシは切り離せない関係なのだ。こまったもんだ。
(あ)

No613

漫画貧乏
(PHP研究所)
佐藤秀峰

最近は著作権の切れた本はもっぱらコボタッチ(楽天)で読んでいる。電子書籍端末としては異例の安さ(7800円)で、寝っ転がって読むぶんには軽くて手も疲れない。思ったより読みやすい、というのが正直な印象だ。 自分で電子本をつくろうという気はいまのところ全くないのだが、このコボタッチの発売で、一挙に「電子書籍端末」という言葉が身近なものになりだしたのは間違いない。それもこれも元凶は本書を読んだせいかもしれない。著者は「海猿」や「ブラックジャックによろしく」などの売れっ子漫画家(私はどちらも読んでないが)なのだが、本書ではっきりと「漫画では食えない」と断言している。これにはビックリした。これまでの本の電子化における議論は、「エロ系や漫画しかビジネスにならない」というあたりの議論が中心なので、「漫画家はつぶしがきいて、いいよなあ」と思っていたのだが、どうもそんな甘くはないらしい。商売相手の大手出版社はボロクソに叩かれ、未来のない出版界はくそみそに罵られている。そして自らHPオンラインで漫画を売りはじめるのだが……。すぐに「電子書籍元年」などとアドヴァルーンをあげたがる胡散臭いデジタル・オタクたちとは一味違う、自分の作品を実験台にした、孤独で壮大な挑戦の記録になっている。オンライン出版の成功を祈りたい。

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