Vol.659 13年7月6日 | 週刊あんばい一本勝負 No.652 |
2週間前ですが、母が亡くなりました | |
6月29日 久しぶりに帰省した息子と家族3人で食事。仙台から何やかやと飲み食いが続き、今日朝の体重は1キロ増。この1キロを減らすのに3日かかる。昨夜、待ちに待ったウディ・アレンの新作映画(といっても3年前)は、見事に空振りだった。期待するとろくなことがない。逆に期待しないで読みはじめた楡周平『虚空の冠』(新潮文庫)が面白い。副題が「覇者たちの電子書籍戦争」。書名がよくないなあ。去年1年間辛抱強く付き合った学生たちとの往来もあわただしい。就職が決まったり、里帰りがあったり、聞き書きプロジェクト(学生たちの聞き書きで町の記念誌を作る試み)の相談など、なにかと飲む機会が増えそう。 6月30日 デンマーク国歌には「ブナがあるかぎりデンマークは滅びない」という一節があるそうだ。みずみずしい若葉の緑に全身が染まってしまうようなブナ林を歩いてきた。目に見えないものを不容易に信じないタイプなのだが、森の中の緑の王国のただなかにいると、森林浴やフィトンチィドの効果や森の妖精の存在も、みんな信じてもいいような気分になってくる。日曜日、久しぶりに(といっても2週間)岩手・湯田から女神山(956m)に。少し身体が重かったが、ブナ林の緑に身を置くと、ユルユルと身体から毒素が溶け出していくのがわかった。駅舎にある温泉「ほっとゆだ」で、あわただしかったこの10日間ほどの喧騒の記憶を洗い流した。 7月1日 7月だ。6月はいろんなことがいっぺんに身辺に起きた。驚いたり、戸惑ったり、覚悟を決めたり、新しい挑戦を決めたり、とあわただしかった。仕事も忙しくなった。ピンチヒッターで代役を頼まれ、何本かの新企画も考え付き(最近珍しい)、原稿もあきずに書いた。友人も何人か出来たし、それにともない酒席も多くなった。おかげで体重は現状維持だが、本格的にやばいのは今月かも。けっこう7月は例年と違って外に出る機会が増えそう。もう体重の増減以外は何があっても驚かないが、できれば何もない平穏な日々が理想だ。なにもない日常というのは退屈そうだが、一度徹底的に退屈を味わえば、また下り坂の人生への対処の方法も変わってくるのかも。 7月2日 実は2週間前、入院していた母が亡くなった。91歳の大往生だ。生前から兄弟で「家族葬で行こう」と決めていた。近親者で葬儀は済ませた。今日が仏送りの日だ。母をお墓に入れる。突然前触れなしに亡くなったわけでない。施設から入院、HCUと、ゆっくりと階段をのぼりながら旅立っていった。だから私たち家族も静かに落ち着いて見送ることができた。個人的なことをいまさらここで公表したのは、今日の新聞死亡広告に載せたためだ。「近親者で葬儀は済ませました」という内容のもの。花も香典も遠慮する旨も文章に入れたかったが、長くなるのでやめた。こういう弔いの仕方が母には似合っている。この2週間ほどバタバタあわただしく駆け回っていたのは、こういう事情でした。ご迷惑をおかけした皆様、この場を借りてお詫び申し上げます。 7月3日 今日はいい感じで雨。ホッと一息といったところ。ある人のブログで横手市のカラッカラの貯水池の写真を見てショックを受けたばかりだった。それにしても梅雨入りしてからほとんど雨が降らないというのは長い人生で初体験かも。天候異変にはすっかり慣れっこになってしまったが、朝はかならずカミさんに今日の一日の最高気温と最低気温を訊く。その数字で着る服を決める。車を使わず、洗濯や買い物をするせいだろうか、天気に関しては女性のほうが圧倒的に敏感で関心が強い。それに比べ、職住近接のせいもあるが、こちらは天気には無関心そのもの。来客や外出の有無で服装を替える程度だったが、このごろはお天気にも鋭敏に反応できる。山歩きのおかげかも。 7月4日 一昔前、大きな仕事や出来事の後は「温泉でも行ってのんびりしたい」とよく思った。思ったが実際に行くことはなかった。昭和の紋切り型フレーズというか時代的な流行り言葉だったのだろう。山歩きするようになって温泉は身近になった。温泉で汗を流すのは快感だが、無目的に温泉に行くのは退屈でごめんだ。風呂に入って酒飲んで本を読む、だけなら家のほうがずっといい。あくまで山あっての温泉だ。というわけで「温泉に行きたい」とは思わなくなったが、それにかわる楽しみを見つけられないまま今日まできてしまった。それはそうと、キヌガサソウって県指定の絶滅危惧種だったんだね。焼石岳で観てきたばかりなので、神室山の群生地確認の新聞ニュースには驚いた。 7月5日 高校一年生の姪っ子と髪型の話になった。「ツーブロがカッコイイ」と彼女は何度も言う。ツーブロ? ツーブロック、すなわち刈り上げの上におかっぱ頭を乗っけたような髪型。頭を2種類の刈り方でまとめるやつだ。大学生とのコンパで、居酒屋チェーンの酒メニューが「カクテル」中心なことに気がついた。若者は「とりあえずビール」などという飲み方はしないのだそうだ。最初からカクテル、最後までカクテルが主流だ。酒メニューの丸々1ページを「ノンアルコール・カクテル」に割いている理由が、よくわかった。しかし流行って面白い。昨夜、本棚を整理していたら自分の顔が表紙になった「出版ニュース」誌が出てきた。ワッと思わず目をそむけたくなるダサさだ。発行は2000年11月号、13年前の出来事だ。もう、とても若者を批判する気になれなくなった。 (あ)
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