Vol.687 14年1月18日 | ![]() |
ダウンサイジングに燃える日々 | |
1月11日 散歩のときメガネをはずして歩くのが習慣になってしまった。裸眼で街を歩くなんて、眼鏡をかけはじめた高校時代以来の経験だ。就眠前には目薬をさすようにもなった。これも2年ほど前から。こうしたことの効果なのか、目やにがたまったり、頭痛や肩こりがなくなった。裸眼散歩も目薬も病気の前兆があってはじめたわけでない。毎日酷使してお世話になっているのに目には一度も感謝の意を表したことがない、と思いついて、突発的にケアしはじめただけだ。先日の健診ではメガネをかけた視力は1・5。昔よりあきらかに見えるようになっている。老眼の逆影響なのかな。近眼のせいか老眼がまだそれほど進んでいない。新聞や本の文字がメガネをかけたまま読める。自分でも不思議だけど。 1月12日 今年初めての本格的雪山登山は男鹿・真山。低山だが急登の続くけっこうハードな山で侮れない。なまはげと吉永小百合のCMで有名になったからか、神社境内駐車場に三重ナンバーの車。約2時間たっぷり汗をかいて、山頂でランチ。汗で手足がカチンカチンにしばれてしまい、ランチどころではない。F女史の野点のサービスまであったが寒くて寒くてお茶どころではない。毎回この寒さと闘いながら、なぜか雪山はやめられまへん。何が魅力なのかよくわからないが、ひとつはあの静寂と純白の世界。とくに真山は動物の気配が全くない不思議な世界だ。一説にはなまはげがいるので動物たちが怖くて出てこない、と言われているが、そんな与太話を信じたくなるほど音も生き物の気配も皆無な山だ。 1月13日 ちょっとした用事があり仙台へ日帰り旅行。3連休の最後にいい息抜きになった。3時には用事が済んだので、帰ろうと駅に急いだら、アーケイド街の目立たない場所(ビルの3階)に、名画を上映している劇場がある。仙台では有名な小劇場なのだろうが、こちらが全く知らなかっただけなのだろうが、夕方5時から邦画ドキュメンタリー『立候補』をやっているではないか。酒を飲むより映画を見よう、と予定変更、実は前から見たいと思っていた映画だ。あのマック赤坂や羽柴誠三秀吉といった「泡沫候補」を追っかけたドキュメンタリー映画で、期待通り面白かったが、街に名画座がひっそりある風景ってうらやましい。 1月15日 毎朝、30分以上かけて雪かきをする。家と事務所と倉庫前の3か所で、もうこれだけで息が上がる。冬を嫌いな人が多いのは、この雪かき仕事がハードなせいもある。このところ雪かき作業がけっこう楽しくなっていきた。スノーダンプの使い方を取得したせいだろう。これは便利だ。今頃わかっても遅いといわれそうだが、スコップ1本の時とは雲泥の差、1回で運べる雪の量がまるで違う。そばに雪捨て場所があるのがスノーダンプの使用条件だが、家の傍らに盛り上げておけば、あとで除雪車がちゃんと取り除いてくれる。私の町内は学生アパートが多いせいか違法な路上駐車が目立つところだ。除雪車にとって路上駐車は天敵だ。すぐに町内会長に通報され、、今日も学生が渋々雪で埋まった車を掘り出していた。おお、こわッ。 1月16日 去年から意識的に取り組んでいる仕事がある。40年間で広げに広げすぎた取引先を縮小する作業だ。いわゆる事業のダウンサイジングをしているのである。極端に言うと100近くあった取引先(教科書販売会社や道の駅売店、お土産店や温泉、スポーツ店など書店以外のもの)を片手で数えられるところまで絞ること。それを消費税でゴタゴタする3月いっぱいまでに肩をつけておこう、という算段だ。委託業務を中止すると大量の返品が返ってくる。この処理も大変なのだが、もっと大変なのは「過払い」が生じてしまうこと。ダウンサイジングにもお金がかかるのだ。今日は青森のある書店から30年前に出した本(書名すら忘れていた)の在庫が棚からごっそり出てきた、との連絡。いやはや、こうした対応だけで貴重な時間が削り取られていく毎日だ。出版界って外で観るよりずっとアバウトな世界なんですよね。 1月17日 朝から、はやく夜が来ないか待ち遠しかった。夜の散歩もそこそこに9時には寝床に入って読みはじめた。読了したのは夜中の1時半。松田美智子『サムライ 評伝三船敏郎』(文藝春秋)の帯には「黒澤明との愛憎」と大書きされたコピー。でもこのコピーはさして意味のあるものではない。黒澤と三船の間にはさして問題になるような確執はなかった、と本書では解き明かしているからだ。強く印象に残るのは三船の晩年の孤独には愛人の宗教が深くからんでいることだ。その愛人の娘は今もテレビなどで活躍しているが、やはりその背後には宗教団体の影がちらつく。『天才 勝新太郎』も人物ノンフィクションとして秀逸だったが、松田優作の元妻である著者は、この作品で完璧にプロのノンフィクションライターとして独り立ち、というところか。 (あ)
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