Vol.73 02年1月19日号 週刊あんばい一本勝負 No.70


新年会は沖縄気分で

 今年の新年会は去年の沖縄舎員旅行の余韻を引きずり、南通りにオープンした琉球居酒屋「リトル沖縄」で盛り上がりました。この居酒屋は今秋田で一番はやっている場所かもしれません。とにかくいつ行っても満杯で、若者たちが盛り上がっています。「出版やるより沖縄居酒屋をやるほうが確実に儲かりそうだね」という声も舎員からでたほどで、その言葉には冗談ではすまない真剣さがにじんでいました。でもなぜ今沖縄なの? 私にはよく意味がわからないのですがNHKのテレビ番組の影響が大きいのだそうです。ということは単なるブームというわけですか。泡盛やゴーヤのおいしさがいきなり若造どもに受け入れられるというのも癪に障るのですが、とりあえず沖縄が注目を浴びるのはいいことです。そんなわけで(どんなわけだ)わが舎の平均年齢の高い新年会も閉店時間ぎりぎりまでねばり、2次会は定番の「グランビア」で午前様の帰宅となりました。今年もよろしく。
(あ)

久しぶりの仙台は……

 ほんとうにもう数年行ってないのですが、この三連休の休みを利用して仙台・山形3泊4日の旅をしてきました(休みを利用して行くというのが情けない)。仙台で驚いたのはアーケードを埋め尽くした通行人の若者たちです。繁華街はどこも若者がいっぱいで、最初は何かお祭りでもあるのかと訝ったのですが、すぐに気がつきました。仙台はとにかくどこに行ってもお店もメディアも商品も空気までもが若者にこびていて、大人が入れる居酒屋を探すだけでも一苦労なのです。それがつまらないと感じていた理由だとわかりました。お会いした結城登美雄さんに聞いてわかったのですが、仙台は20歳から25歳までの年齢層が政令指定都市の中で1番高いのだそうです。若者のパワーが町を変える……なんて事を言うが仙台を見る限り、限りなく街がガキっぽい浅薄な色に塗り替えられつつある危うさのほうに目がいってしまいます。とにかく疲れる街なのです。政令指定都市にほとんどまともな出版社がないという事情もこの辺にありそうです。仙台で本を売る戦略をもう一度考え直す必要がありそうだ。
(あ)

うちがよく使う仙台のホテ
ル・ベルエア 7千円台で
5つ星のおすすめです。

わが舎のトイレ美術館

 この絵は無明舎の事務所に飾られている絵です。事務所のどこの場所に架かっていると思いますか。  玄関? 台所? 廊下? 神棚? いえ、トイレのなかです。そのほか絵は玄関、階段、2階の社長室などにもあり、合わせると13枚になります。そのうち、場所的にはトイレ近辺に3枚も集中的に架けられていますから、いわば「トイレ美術館」です。画集や雑誌などから切りぬいたものではなく、すべて本物の絵です。大きさは1号(ハガキ1枚のサイズ)から5号ほど。すべて舎長が購入したものです。いつの日か噂を聞きつけて見知らぬ人が「絵を見たいのでトイレを使わせて下さい」とあがりこんできたらどうしようと、トイレに座って絵を見ながら、余計な心配ばかりしている、渡部七郎です。
(七)

トイレで鑑賞する絵

ヒミツにしておきたいアジア料理のお店

 先日、取材で横手市に出かけた時、素敵な店と出会いました。国道13号沿いにあり、一見、何の店だかわからない、ちょっと怪しい雰囲気のアジア料理のお店です。「ポカラ(歩空)」という名前の店で、店内はゴチャゴチャといろいろなものが飾り付けられていますが、次第にその不思議な空間にも慣れ、居心地よくなってきます。マスターも個性的で楽しい方です。毎年アジア(主にインド方面)に旅行に出かけ、店の名前もネパールの地名が由来だそうです。天井や柱にまで、旅先で撮影した写真や旅券、雑貨、ビールの空き缶、新聞、紙幣などが貼りつけてあって、こんなものまでオブジェにしちゃうのかと尊敬してしまいます。メニューはカレー、タイのパッタイという米から作った麺のヤキソバ、点心、らーめん、横手やきそばまで、アジア料理なら何でもありそうです。もちろん、味もなかなかいけます。取材で立ち寄ったレストランのことは、いつも友達に教えてしまう私ですが、今回だけはしばらく秘密にしておこうかな、とも思っていたのですが……。
(富)

これが店内

No.70

勝者もなく、敗者もなく(幻冬舎)
松原耕二

 著者はTBS「ニュースの森」のキャスターという肩書きだが、秋田でTBSは映らないから初めて聞く名前だ。9本のルポのうち前半の3本は「私ノンフィクション」で、自分の名前が長男でもあるに関わらずなぜ「耕二」なのかを探っていく物語で、これは本当に抜群に面白く、著者の物書きとしてのセンスや将来性を感じさせる。が、後の6本は出来不出来はあるものの凡庸そのもの。2番手の女子柔道選手、孫正義の少年時代、指揮者の佐渡裕といった人たちをいかにもといった旧態依然としたルポの手つきで取り上げているのだが、前半3本との落差がありすぎる。うがちすぎかもしれないが、後半のほとんどがつまらないルポなのは自分の仕事、すなわちテレビ放送のために取材として手がけた材料を文章ルポという形で再利用したシロモノだからではないのだろうか。要するに身銭を切っていないのだ。ギリギリのところで自分の生き方や書きたいことと取材対象がクロスせず平行線のままである。しかし、自分の名前の命名の謎を父親の半生、関わった仕事場の人間を訪ねていくことで追いかけていく緊張感みなぎる前半だけでも読むに値する本だと思う。

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