Vol.76 02年2月9日号 週刊あんばい一本勝負 No.73


迷犬ノーラの死

 無明舎でライターの仕事をしている藤原優太郎さんが、秋田市の隣にある河辺町の仕事場で飼っていた犬のノーラが、寄生虫が原因の犬の病気フィラリアで先月末に死んでしまいました。12歳だったそうです。ノーラという名前は『人形の家』のノーラから付けられた名前ですが、もともと拾われた犬だったのでノラ犬にもちなんでいたようです。みんなはノーラとは呼ばずノラ、ノラと呼んでいました。
 偶然ですが死ぬ数日前の日曜日、オーストラリアから留学してきている娘の友人がスキーをしたいというので、藤原さんのところに連れて行き歩くスキー(クロスカントリースキー)を楽しみました。そのときノーラの腹が異常に膨らんでいるし、よたよたとしか歩けないので驚いて聞くと、フィラリアにかかってしまったとのこと。もう、そんなに長生きできないだろうという話でした。ちょうどたくさん弁当を持っていったので、鶏のから揚げ、ハンバーグ、おにぎり、サンドイッチなどのご馳走攻めにノーラは大喜びでした。スキーや裏山歩きにもなんとか付いてきましたが、それが最後のご馳走と散歩になったようです。

ノーラ
 仕事場に隣接する「河辺町少年自然の家」の管理人を、藤原さんは去年まで務めていましたが、そこには無明舎のお客さんたちもよく泊まりに行き、東京の地方小出版流通センターやアクセスの人たちも常連です。恒例となっている秋の「無明舎鍋っこ大会」もここが会場で、昨年は長野の龍鳳書房さんが社員旅行で参加しました。そんなときはノーラが大勢のお客さんと、ごちそうのおすそ分けに興奮して大喜び。また女性が好きだったようで、追いかけられるのはいつも女の子でした。
 山の中に住んでいたためマムシにかまれたり、時々出没する熊と追いかけっこをしたり、川に飛び込んで泳いだり、登山の先導をしたりと自然犬そのものだったノーラでしたが、フィラリアには勝てなかったようです。今年の鍋っこ大会は少し寂しいものになってしまいそうです。
(鐙)

フリーライターの藤原里香さんです

 4月に刊行予定の「岩手の公共温泉」のうちあわせ中の藤原里香さんを紹介します。藤原さんは角館町出身で大学を卒業後、東京の出版社に7年つとめてUターンし、今は秋田でフリーライターをしています。料理、ガーデニング、観光案内などが得意分野で、雑誌などへの原稿執筆だけでなくイベントなどのコーディネーター、イラストレーターとしても活動しています、シックなホテルで人気の「角館武家屋敷ホテル」のプロモーションにも創業以来から関わっています。特に角館に関する特集では、この人に頼めばなんでもOKです。
 「岩手の公共温泉」のカメラマンは、同じ角館町在住の佐藤勝彦カメラマン。二人の「角館パワー」が岩手の温泉でバクハツします。楽しみにしてください。
(七)

藤原里香さん

20年ぶりの再会

 正月明け、書店で『「南京事件」日本人48人の証言』(阿羅健一)という文庫をみかけ、購入しました。20年ほど前、何回か会ったことのある人が書いた本だったからです。知人を介して知り合った阿羅さんは、当時、東北大学を出て東京の大手のレコード会社に勤務していました。何回かお会いしたのですが、まもなくレコード会社をやめてフリーのルポライターになったとの噂で、私も神奈川から秋田市に戻ってそれきりになっていました。以前にお会いしたとき阿羅さんは「政治や歴史への意見を発表していきたいので、いつかレコード会社はやめる」と口にしていました。「南京虐殺」(1937年)の真相を、当時南京にいた軍人・記者・写真家など関係した生存者のインタビューから照らし出そうとした労作です。この本を読みながら、変わらぬ阿羅さんの決意を見たようでうれしい気持ちになりました。
(七)

小学館文庫

今週の花

 今週、事務所を飾っているのは菜の花、チース、ラッパ水仙、チューリップ。
 チューリップには3000を超える品種がありますが、花の色が真っ黒、真っ青、まっ茶色、花びら全部が緑色の4つの色のチューリップだけは存在しないと言われているそうです。チューリップは16世紀に原産国のトルコからヨーロッパに広まりました。愛好家が増えて人気が高まり、球根1個と牧場が交換されるような時代があったそうです。何百年もかけて品種改良され、数え切れないくらいの種類が作り出されているのに、この4つの色の花だけができないなんて不思議です。球根1個と牧場を交換するほどチューリップマニアではありませんが、存在しないと言われる4つの色のチューリップが作り出されたら、やっぱりひとめ見てみたいと思います。
(富)

No.73

素晴らしい一日(文芸春秋)
平安寿子

 「たいらあずこ」と読む。53年生まれのフリーライターで表題作で99年のオール読物 新人賞を受賞。というのが著者のあらましである。本書には6つの短編が収められているが、やはり圧倒的に最初の表題作が面白い。お金を貸したぐうたら男にせまって、お金を返してもらう長くて不思議な1日を綴ったものだが、このぐうたら男が何とも変なキャラクターの男っで憎めないどころか天使のようなヤツである、というところがミソなのだ。彼女の借金を返すために主人公である私とぐうたら男が友人たちの間を再借金行脚するという奇想天外な小説なのである。でも、こんなんてありそう、と思わせる自然体のユーモア感覚やこなれた文章力は見事である。他の5編も若い女性とお金の問題を扱ったもので、陰湿さや類型化に陥りやすい男女の恋愛沙汰を、お金という脇役をうまく配することで、生き生きと描くことに成功している。早く次回作が読みたい。

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