Vol.787 15年12月31日 週刊あんばい一本勝負 No.779


今年も1年間、ありがとうございました。

12月26日 手帳をくくって今年1年読んだ本のベストテンを作った。人様に公開できるような内容ではないのだが恥を忍んでアトランダムに列挙すると……「現代、野蛮人入門」「登山と日本人」「百歳までの読書術」「GHQと戦った女沢田美喜」「断片なるものの社会学」「終わった人」「脱出老人」「はじめての民俗学」「弓立社という出版思想」「夜露死苦現代詩」「圏外編集者」「日本史がおもしろくなる日本酒の話」「開口閉口」……とジャンルも発行年もバラバラだ。読んだ本は点数をつけてチェックしている。上記の本は自分の中で「8」点以上をとったものばかり。ジャンル的には古典や文学作品をもっと読みたいのだが精神的な余裕がない。その時々の時代の流行や気分に左右され読んでしまう本が多いようだ。

12月27日 ようやく雪。「ようやく」という割にはドカ雪でオイオイと言いたくなる。昨日に引き続き「映画ベストテン」。というほど観てはいないのだ。1位はダントツで「ニーチェの馬」で、これはいろいろと異論のあるところだろうな。続いて「八月の家族たち」「キリマンジャロの雪」「画家と庭師とカンパニュー」。好きなW・アレンの新作(といっても2年前だが)「ブルー・ジャスミン」「ジゴロ、イン・ニューヨーク」はガッカリしないで済んだから、よかったということ。日本映画は昭和30年代モノクロ映画偏重なので、とりたてて今あげるべきものもない。特筆したいのは11月に公文書館主催で開かれた「県政ニュース」アーカイブ上映会。これは期待以上のおもしろさだった。もしかするとこの県政ニュースが今年の一番の収穫だったかも。

12月28日 今日から東京2泊3日。飲み会出張なので体調管理が心配だ。お正月は2日に恒例の「登り初め」(筑紫森)。あとは何も決まっていない。あまり外に出ないで家でダラダラしている予定。車もないし(新入社員が使うため)、来客予定もなし。あまり雪が降らないでくれれば、それ以上のぞむものはない。

12月29日 東京は青空が広がり、外に出ているだけで気分がいい。冬だけでもこっちに住みたい、といつも思ってしまう。神保町の古本街を散歩していたら、どこの古書店も仕事納めの大掃除中。道路に出て忙しそうに働いている古書店員に若い女性が多いのに驚いた。友人の古書店員の方に訊くと、「近くに共立女子大があるので、そこのバイトが多いんですよ」とのこと。そうだったのか。そういえば書店員にも共立の出身者が少なからずいることを思い出した。

12月30日 2晩連続忘年会を終え今日の昼は3年前のアルバイターH君と岩波ブックセンター前で待ち合わせ。30日ともなればさすがの神保町も店は開いていない。ブラブラ歩きながら賑やかな秋葉原まで移動。途中、有名な蕎麦屋の前に長蛇の行列ができていた。並んでまで蕎麦を食いたいか。秋葉原は人でごった返していたが、半分は外国人。人混みを避け駅前ライオンでランチ忘年会。H君は秋大新聞部出身、うちの初代アルバイターだ。横浜出身で青森の私立高校の教師になったのだが、来年からは首都圏の学校に転勤するという。ほろ酔い機嫌で、帰りの新幹線の車中の人となる。

12月31日 大晦日前夜に秋田着。朝ホテルで風呂に入ったのだが、夜も自宅の風呂で汗を流す。映画を1本観て(『アルゴ』)、本を少し読んで(『生命と記憶のパラドクス』)熟睡。やっぱり自分のベッドはいい。大晦日なのでゴミ出しはなし。3日も事務所を留守にすると雑事がたまって片づけるのに半日は掛かってしまった。午後から「和食みなみ」に「おせち」を取りに行き、正月中の足らない買い物。車がないので散歩代わりだ。お正月といってもまったく普通通りの生活で、雪が少ないのだけが救いだ。早く雑事を片づけて映画を観たい。
(あ)

No.779

日本を壊す政商
(文藝春秋)
森功

 人材派遣の雄「パソナ」の南部靖之の実像に迫ったノンフィクション。こうした人物や企業のインサイダー・ノンフィクションが好きなのはなぜだろう。単にのぞき見趣味が昂じた結果なのだろうか。それにしてもなぜ今パソナなのか。政商というにはあまりに小粒で軽量級、ベンチャー企業の代表選手としては地味で経済規模も大きくない。どうやら例の歌手・ASKA(チャゲ&アスカ)の愛人問題が取材のきっかけのようだ。アスカと愛人が出会った秘密パーティの主催者が南部であり、南部の下にはこうした得体のしれない芸能・スポーツ・政界・ヤクザ(アングラ人脈)との幅広い交流があった。安倍総理の政策ブレーンとして改正派遣法案などの雇用制度を意のままに動かすフィクサーとしての役割にも本書は触れている。でも、企業家ならだれでもこの程度の人脈や政治家との接点はある。犯罪を構成する要素は見当たらない。いまひとつ何かが足らない、のだ。本書では肝心の南部本人と安倍総理に依頼した取材を拒否されている。そのせいなのだろうか。本丸に斬りこんでいない「歯がゆさ」が読後残ってしまった。佐野眞一ならこのテーマをどんな風に書いただろうか。そんなあれこれを考えながら読了。

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