Vol.83 02年3月30日号 週刊あんばい一本勝負 No.80


秋田にも春が来た

  雪国秋田にもようやく春が訪れました。今年は暖冬といってもよいぐらい暖かく、雪も少ない冬でした。12月にある程度まとまった雪が降りましたが、1月2月はほとんど雪が降らず、おかげで最近になく楽な冬を過ごすことが出来ました。その結果初めて気が付いたことに、雪が少なく暖冬の年は、春を迎える感動が薄いということがあります。普段の年は、毎日降りつづける雪をうらみながら家の前の雪寄せをし、吹雪で前がよく見えないツルツル道路で自動車の運転をする、というのがあたりまえです。ところが今年はほとんどそんな苦労がないまま冬が終わり、いつのまにか春になっていました。例年のように雪解けとともにフキノトウや福寿草が顔を出し、春が来たことに強く感動するということがありませんでした。なにか損をしたような気分です。横浜出身のアルバイトの山岡君などは、「雪のない冬だったので悲しいです」などと言っています。
 でも木の芽が芽吹き、つくしが顔をだし、コートを着ないで外を散歩できるというのはやはり嬉しいものです。春の訪れが感動的でなかったなどと文句を言ってないで、冬の間できなかった写真撮影に走り回らなければなりません。春はありがたいものです。
(鐙)

無明舎の近くで見かけたつくし

北上市で

 高速道で湯沢までしょっちゅう移動するのですが、その先にある岩手県の湯田や北上まではめったに足を伸ばしません。県境というのはけっこう心理的に重い枷になっているんですね。先週の日曜日、なんとなく思い立って秋田道を突っ切って北上市に足を踏み入れてみました。何の目的もなかったので北上市立図書館に入りました。小ぶりですが棚を見ただけでかなり利用度の高い、レベルの高い図書館であることがわかり嬉しくなりました。洋書や全集ものもコンパクトに揃えられていて「きちっと本を選んでる」のがよくわかります。がっかりしたのは隣に立っている「日本現代詩歌文学館」で、その意気込みたるや立派なのですが、展示は歌人や俳人の色紙を並べただけ。俵万智の生原稿用紙がショーケースに入ってるのを見てもなあ…という感じです。この手の地味な文学館は展示や維持が難しいと思いますが、思い切った企画展を期待しています。
(あ)

これが文学館

詩歌の森公園

「菅江真澄読本」全5巻完結しました!

 1994年に1冊目の本が出た田口昌樹著「菅江真澄読本」が、今月刊行された「菅江真澄読本5」をもって一応の完結を見ました。「いちおう」というのは視点を変えた真澄像の単行本企画が同じ著者の手によってこれからも続くからです。足かけ8年にわたり5冊のシリーズを出してきたわけですが、膨大な真澄の日記からキーワードを抜き出し、そこからこの謎の多い江戸の紀行家の全体像に迫ろうというユニークな企画意図は、この5巻でほぼ果たせたと思っています。小舎では完結を機に5冊本セットのパンフを作り、大々的にマスコミや読者にセット本を売り込む作戦に突入しています。
(あ)

営業用に撮影した5巻本写真

No.80

悪意(講談社文庫)
東野圭吾

 ミステリーは苦手だ。ほとんど読まない。話題になった海外ものを見栄張って読むこともあるが、たいがいは途中で投げ出してしまう。とにかく「殺す」という行為にリアリティがない。それだけでなくバイオレンスが基本的に好きではないのだ。それでも純粋に知的ゲームとして楽しめたり、現代病理を鮮やかに描写していたりという惹句があると、だまされて読んでしまう。それと、ノンフィクション系の本ばかり読んでいると無性にエンターテイメント系の本を読みたくなるときがある。その世界に何もかも忘れて埋もれてしまいたくなるのである。そんな時はもっぱら東野圭吾を読んでいる。この人の書くミステリーはひりついたような苛立ちや、うんざりするような暴力シーンが少ないので、嫌悪を感じなくてすむからかもしれない。どれを読んでも「なるほど」と感心したり「そうかなあ」と犯罪心理を反芻してみたり、テーマにまがれている「静かなゆるさ」のようなものけっこう気に入っている。

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