Vol.92 02年6月1日号 週刊あんばい一本勝負 No.89


今が秋田は一番美しい季節です

 北国は今が一番美しい季節です。華やかさとは縁遠い茶色の大地にようやく水が張られ、小さくてかわいい緑の苗が顔を出すと、周辺の景色が潤いに満ち、躍動感あふれる、豊かな大地に変貌します。事務所前の石井さんの田んぼにも水が張られ、苗が植えられました。この一番気持ちのいい景色を小生は海外旅行のため見ることなく過ごしてしまいました。

石井さんの田んぼ
 20日の日に帰ってからも2度も東京を往復して、なかなか豊かなこの景色を静かに楽しむ余裕もないまま5月も過ぎてしまいました。何かとっても損をした気分です。このごろはなぜか緑(自然)に対する郷愁は強くなる一方で、また山登りをはじめようかとも思っています。自然の移ろいは、確実に馬齢を重ねる自分の過去や未来を考えさせてくれる、不思議な効用があります。
(あ)

ニューヨーク寸描4景

 ニューヨークではほとんど毎日街を歩いていました。1日8時間歩いた日もあったほどです。世界でもっとも有名な都市であるこの街のことはよく知られているので私ごときがいまさらガイドするのもヘンなので、散歩の途中にであった「ちょっと不思議な」ニューヨーク路上の出来事を紹介します。1枚目の写真は、テロ事件で崩壊したワールド・トレード・センター前をデモ行進する高校生たちです。偶然に出くわしたのですがプラカードをみる限り「戦争反対」「麻薬を学校に持ち込むな」といったスローガンを掲げた1000人規模の大きなデモでした。2枚目は、真昼間にブロードウエイの真ん中でパンツ一丁で歌を歌っている若者です。別に狂っているのではなく、何かのパフォーマンスなのでしょう。それを見る群集のリアクションが興味深いものでした。男はほとんどが無視、若い女性たちは嬌声を上げ、彼にエールを送っていました。なかなか面白い男女の心理ですね。3枚目はかなり不気味で、西地区ハドソン川そばの通りで音楽をかけながら路上で瞑想している中国人女性たちです。中国政府に対する抗議のストか、あるいは最近流行りの何とか言う中国の新興宗教の儀式なのかもしれません。これはかなり背筋の寒くなる「暗さ」でした。4枚目はセントラルパークでよく見かけた「二人乗り乳母車」で、どうもニューヨークでは乳母車がブームのようで、近いうち東京でも流行りだす可能性大ですね。以上、写真でみるニューヨーク寸描でした。
(あ)

展覧会が花盛り

 4月の中旬に盛岡の岩手県立美術館でかなりの大規模なP・クレー展をみてきました。翌日には宮城美術館でシャガール展をみて、ニューヨークではエジプト古代展、サンパウロではルノアール展をみました。日本に帰ってすぐに国立近代美術館でカンデインスキー展をみて(東京駅大丸のミロ展は20日で終わっていてダメ)……といった具合で大画家の本物の絵を堪能しました。サンパウロのルノアールはひどい展示でがっかりしたのですが「いい作品はみんな東京に貸し出している」とのことでした。なるほど。日本にいれば巨匠のものはほとんども逃す心配はありませんね。
(あ)

展覧家のチラシ

メモにはなにが便利か

 外出のとき、かならずメモ帳をもつ。どんなアイデアが突然ひらめくかわからないし、忘れてはいけないこと、必ずやらなければならないこと、をメモる。ふだんは黒革のシンプルな手帖を持ち歩いているのだが最近はポケットがかさばるので、もっぱらソニーのICレコーダーを持ち歩いている。
 これは便利なのだが大きな欠点もある。メモする内容が多岐にわたり、さらに企画や再考、書き込み、訂正を要するものなどをチャートでひとめでわかるようにしたいとき、声なのでまるで役に立たないのである。普通の手帖でもそれは同じで、チャートを作るような企画メモにはスペースがいじましくて合わないのである。今は窮余の策としてB6サイズをちょっと小さくした「キティちゃん手帖」を飛行場で買い使っているのだが、これがすごく使いごこちがいい。アイデアが広がるちょうどいいスペースというか、見開きの具合や書きごこちも実にしっくりくる。人前で取り出せないという欠点を補って余りある、小生にはぴったしのメモ帳である。
(あ)

3種類のメモ用具

No.89

誰も知らなかった
英国流ウォーキングの秘密
(山と渓谷社)

市村操一

 この本は買ったはいいが「たぶん読まないだろうな」と思った。ネット書店で本を買うよ うになってから、衝動的に買いはするものの時間がたつと「どうしてこんな本を買ってし まったんだろう」と後悔するケースが確実に増えている。これがネット書店の魔力という やつか。本書をペラペラとくくっていたら「英語は、つづりと発音が一致しない。こんな 言語が世界語になりつつある現状は人類の不幸である」という一節があった。単なる散歩 の本ではないようだ。とりあえず便所の隅におき、用を足しながら少しずつ読もうという 魂胆だったのだが、これが面白くてやめられない。英国のさまざまなフットパスを体験し ながら、その合間合間に英国の歴史や他国との軋轢が面白いエピソードで随所にちりばめ られていて、読むのがすこぶる楽しい。「少しずつ」どころか7回ぐらいの便所通いでけ っきょく読了してしまった。かなりの仕掛けが盛り込まれた労作である。著者と一緒に英 国を散歩しながら、この国のアバウトな成り立ちや人情まで比較人類学の授業のようによ く理解できるようになっている。

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