No.42
ずっと踏破してみたかった、歴史の古道
[仙北道(全長12.3キロ・秋田東成瀬村〜岩手胆沢町――2013年8月25日)]
 ずっとこの古街道を歩きとおすのが、夢だった。
 4年ほど前、旧道入り口から中間地点の柏峠まで歩いた経験があるのだが、今回は秋田県側の十里峠から岩手県側の大寒沢林道終点まで、約12キロを歩きとおす奥羽山脈越えルートだ。もともと、この道は平安時代から軍事の道として、生活の道として、旅の道として、あるいは逃亡の道として、たくさんの人々が往来した記録の残る「街道」だった。国道や鉄道が生まれる以前の時代、いわば秋田の玄関口として文化移入の最前線を担った歴史の道である。が、近代に入り交通網の整備が急速に近代化するなか、この道は顧みられることなく、忘却の彼方へと消えていった。
 それが平成2年、胆沢町の有志による踏査隊が、ほとんど原生林と深いヤブに覆われていた一条の道をたどり踏破に成功、全線をよみがえらせた。岩手側大寒沢林道から秋田の手倉越えのルートだ。
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 今年は岩手胆沢川の主催の年。交代で主催地が変わることになっている。片道だけで10時間近くを要するから、どちらかのゴール側に送迎の車を用意しなければならない。そのため今回ならば岩手側に着いてから、車を待機させ秋田県側に戻ってくる必要がある。出発点と到着点に車を用意しないと踏破できないから、一般的な山歩きでは無理がある。
 秋田市を出発したのは朝4時。ということは和賀岳に引き続き、またしても朝3時起きだ。早起きにはだいぶ抵抗がなくなってきたとは言うものの、朝3時はやっぱりきついなあ。
 東成瀬村の「まるごと自然館」を朝6時にスタート。といっても旧道入り口までマイクロバスで運ばれていく。この道路も一般車両は通行が難しいところ。行政の許可が必要な「使用不可」道路が仙北道には多々ある。一般の人が勝手に歩けない道でもある。 山歩きではないから、きつい登りがあるわけではない。が天候が悪かった。時々雨がぱらつき、おまけに蒸し暑い。希望は道の下草がきれいに刈られていることだ。参加者は総勢40人ほど。スタート地点で気分が悪くなりリタイアした人もいた。これは朝早くから岩手側からバスに揺られて参加したためのようだ。

大胡桃山山頂で

ゴールは岩手県胆沢町
 延々と歩き続ける。昔の旅人たちが中間地点として野営した小出川の河原で昼食。ここまででもう5時間以上歩いている。それほど疲れはない。参加した山の学校の有志連もみんな元気だ。
 ここから最大の難所である大胡桃山を越える。山らしい登りはここだけだが、ここまでがとにかく長い。この登りで足に痙攣がきた人も何人かいたようだ。でもここからは大寒沢林道終点は目の前だ。大胡桃山からの下りは、もうゴールが近いので勢いがでる。弾むように、転がるように下って、30分ほどで林道終点ゴールへ。8時間を超す街道ウォークは大きなトラブルもなく終わった。大勢の方々がゴールで待ち構えてビールをふるまってくれた。
 近くの焼石岳温泉「ひめかわ」で汗を流し、お隣にある宴会場で東成瀬村と胆沢町の交流会。これにも参加させてもらった。五千円の参加費で、飲んで食べて、なんだか申し訳ない。楽しい時間はあっという間に過ぎる。7時にはマイクロバスが東成瀬村に出発する。胆沢から東成瀬村までは車で1時間半ほど。そこからさらに私たち秋田市組は車で1時間半。家に着いたのは10時を回っていた。疲れた。

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●No. 1 草紅葉の海で、なぜかパエリア
●No. 2 贅沢お昼と、お気に入り温泉
●No. 3 白神のブナの森を彷徨う
●No. 4 南八幡平の自然休養林を歩く
●No .5 巨木の森で、雨に追われて
●No. 6 何が悲しくて、遠い県境の雨の山へ(+クマの話)
●No. 7 「キジ撃ち」慣れ、増える体重、初めての山
●No. 8 雹に雷とスパイク長くつ、是山の山
●No .9 賞味期限切れ食品がうまい、きれいな三角山
●No.10 生きものたちと出あい、ラーメンうまい雪の山
●No.11 はじめての朝市、風格の天然杉、泥土のババ落とし
●No.12 雪と風とツェルトとストック
●No.13 「靴納め」はダブル山行、かててくわえて忘年会
●No.14 これが今年最後の山行です、信じてください!
●No.15 桜のつぼみが大きいから、春は早い……
●No.16 彷徨っても漂っても、頂上は遠い
●No.17 動物の足跡がないのは、「なまはげ」がいるからだ
●No.18 どんな山でも、なにか新しいことを学べるもんだ
●No.19 「山があるんで、お先に」って言ってしまった夜
●No.20 大滝を見にスノーハイク、帰りは古民家見学
●No.21 冬は近場にこそ遊び場がある+ついにシュールストロミング開缶!
●No.22 山頂で野点、そうか今日は「桃の節句」か
●No.23 青空、中岳、ひとりぽっち
●No.24 石仏に村人はどんな思いを託したのだろうか
●No.25 冬限定、地図に名前のない山に登る
●No.26 登山道のないやぶ山で、昆虫になる
●No.27 ダブル登山で、県北の春山に酔う
●No.28 GWは雪の回廊を抜け、強風の山頂に立つのが夢
●No.29 街から7キロ先に、千メートル級の山があるの?
●No.30 下水掃除と宮沢賢治とアイゼン登山
●No.31 青空・無風・トラブルなし。雑魚10匹より大物1匹
●No.32 みんな嫌がるけど、オレは好きだヨ、東山
●No.33 週末連続登山で、体力は大丈夫か、ジブン
●No.34 地元のプロと一緒だと、山歩きは百倍楽しい
●No.35 ブナと滝のシャワーを浴びて、少し元気になってきたゾ
●No.36 あれッ、なんだか人並みに体力がついてきたかな
●No.37 雷に追われ、山小屋泊まり、ガスっても岩手山は美しい
●No.38 県内最強のタフな山で、野立の誕生会
●No.39 中央アルプスで観光登山、それもまた楽し
●No.40 面白みはなくても、一度は登ってみたい虎毛山
●No.40 世界遺産の山で、会うのはへんなオジサンばかり

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