No.50
今年もまた、やってきたリンゴ狩りの山
[御嶽山(751m)・黒森山(763m)・横手市・六郷町――2013年11月24日]
横手盆地を見下ろす尾根道ハイクだ。横手高校の裏を入っていく道に記憶がない。もう何度も登っている山なのだが、これはどうしたことか。
いや、この山に限らず、前に登った山の記憶がことごとく失せている。これは私の個性だと思っていたが、そんな身勝手な理由で済ませていいものだろうか。もちろん年齢だけの問題でもない。登るのに手いっぱいで風景や印象まで頭に仕舞い込む余裕がない、とその理由に高をくくっていたのだが、週一で慣習のように登るようになった今も、その慣習(悪癖)が修正されていないというのは、やはり何か問題がありそうだ(ちょっと深刻に落ち込んでいます)。
それはともかく今回はまたしても大好きな縦走コースだ。といっても二つの山をピストンするだけなので、正確には縦走とは言わないか。
一ノ坂登山口から白滝観音分岐を経て、御嶽山頂までは約1時間30分。そこから黒森山山頂までは1時間だ。前に登った人の話では、雪道が熊の足跡だらけで怖かった、と言っていたが、どうやら冬眠に入ってしまったのか、熊の気配はゼロ。助かった。大きな山でないので軽い気持ちで登りはじめたのだが、けっこう足に来た。雪道を歩くのはふだんより2割増しの脚力が必要だ。
黒森山山頂にある鞘道と古い祠で昼食。風も遮られて快適なランチタイムになったが、冬の間は小屋のある山でないと、ランチはつらい。
下山途中、塩湯彦神社の修復に行くという地元の山男と遭遇。そうか、こういう人たちが人知れず山を守ってくれているんだ。ありがたい。

幻想的な冬のブナの森

黒森山山頂で
今回は山歩きのほかに楽しみがあった。いつもの温泉アップルで汗を流した後、増田真人公園脇にある佐々木リンゴ園に寄り、大量のリンゴを買ってくる、というミッションがある。要するにリンゴ狩りつき山行である。山行のついでなのか、リンゴの前についでに登ったのかは、結論の出ない問題だ。
リンゴ農家の佐々木さんは私の高校の同級生のS君の親戚だ。去年、モモヒキーズを連れて行って好評だったので、今年もお願いして、実現したもの。先日、台風があったばかりで収穫の遅れが気になっていたがタイミングとしてはどんぴしゃりだったようだ。
それにしてもモモヒキーズは「リンゴ好き」が多い。かくいう私も一年前のダイエットから昼はリンゴ一辺倒、日々リンゴが欠かせない体になった。私の血や肉はリンゴでできている。収穫前の季節は近所のスーパーで買っているのだが、やはり味は今一つ。それが佐々木農園訪問を機に、毎日うまいリンゴを食べられるようになる。この日が楽しみになるのも無理はないのだ。ビニール袋に好きなだけリンゴを詰めて千円。何袋も買う人が多いのだが、贈答用の大型注文もこの作業場で済ませてしまう。
購入が終わると、台風被害にあった落ちた傷物リンゴを自由に持ち帰っていい、フリー・リンゴ・タイム(勝手に言葉を作ってしまった)だ。ジャムを作る人もいるので、この時間が一番の楽しみという人もいるほど。車もリンゴのために一台分余分に用意する。四人乗りに三人しか載せず、残りをリンゴスペースにとる。かくしてリンゴ園の作業場は戦場になる。また、来年もよろしくお願いします。

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●No. 1 草紅葉の海で、なぜかパエリア
●No. 2 贅沢お昼と、お気に入り温泉
●No. 3 白神のブナの森を彷徨う
●No. 4 南八幡平の自然休養林を歩く
●No .5 巨木の森で、雨に追われて
●No. 6 何が悲しくて、遠い県境の雨の山へ(+クマの話)
●No. 7 「キジ撃ち」慣れ、増える体重、初めての山
●No. 8 雹に雷とスパイク長くつ、是山の山
●No .9 賞味期限切れ食品がうまい、きれいな三角山
●No.10 生きものたちと出あい、ラーメンうまい雪の山
●No.11 はじめての朝市、風格の天然杉、泥土のババ落とし
●No.12 雪と風とツェルトとストック
●No.13 「靴納め」はダブル山行、かててくわえて忘年会
●No.14 これが今年最後の山行です、信じてください!
●No.15 桜のつぼみが大きいから、春は早い……
●No.16 彷徨っても漂っても、頂上は遠い
●No.17 動物の足跡がないのは、「なまはげ」がいるからだ
●No.18 どんな山でも、なにか新しいことを学べるもんだ
●No.19 「山があるんで、お先に」って言ってしまった夜
●No.20 大滝を見にスノーハイク、帰りは古民家見学
●No.21 冬は近場にこそ遊び場がある+ついにシュールストロミング開缶!
●No.22 山頂で野点、そうか今日は「桃の節句」か
●No.23 青空、中岳、ひとりぽっち
●No.24 石仏に村人はどんな思いを託したのだろうか
●No.25 冬限定、地図に名前のない山に登る
●No.26 登山道のないやぶ山で、昆虫になる
●No.27 ダブル登山で、県北の春山に酔う
●No.28 GWは雪の回廊を抜け、強風の山頂に立つのが夢
●No.29 街から7キロ先に、千メートル級の山があるの?
●No.30 下水掃除と宮沢賢治とアイゼン登山
●No.31 青空・無風・トラブルなし。雑魚10匹より大物1匹
●No.32 みんな嫌がるけど、オレは好きだヨ、東山
●No.33 週末連続登山で、体力は大丈夫か、ジブン
●No.34 地元のプロと一緒だと、山歩きは百倍楽しい
●No.35 ブナと滝のシャワーを浴びて、少し元気になってきたゾ
●No.36 あれッ、なんだか人並みに体力がついてきたかな
●No.37 雷に追われ、山小屋泊まり、ガスっても岩手山は美しい
●No.38 県内最強のタフな山で、野立の誕生会
●No.39 中央アルプスで観光登山、それもまた楽し
●No.40 面白みはなくても、一度は登ってみたい虎毛山
●No.41 世界遺産の山で、会うのはへんなオジサンばかり
●No.42 ずっと踏破してみたかった、歴史の古道
●No.43 早池峰の、代替がきつかった、岩の山
●No.44 知っていそうで、知らなかった駒ヶ岳
●No.45 ストックを、持ち逃げされた秋の山伏
●No.46 侮ってしまった! やっぱり太平山系はきつい
●No.47 この山には、もう来られないかもしれない
●No.48 山よりも、ランチと温泉が楽しいこの季節
●No.49 晩秋の雪山は、みごとな小春日和

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