No.56
春子館にも立ち寄って、ここは冬の定番コースだ
[大滝山(206m)秋田市――2014年2月16日]
 日曜ハイクは市内の「大滝山」。ここの用水地を一周し、かつ山頂にも立とうという企画だ。秋田市内にこれだけの自然が残っているのは驚きだが夏はヒルにやぶ蚊、クモにヘビ、さらにクマの巣窟という五重苦を奏でる場所で、逆にめったなことには近づきたくないところだ。数年前、夏に一人で登った時は登山道がクモの巣だらけで、とんでもない目に会った経験がある。いたるところに不気味なクマ棚があり、最後は右足すねをガッつりヒルに喰われてしまった。ヒルに喰われたのを知らず(痛くないので)そのまま温泉に入り、湯治客から注意されて初めて血が出ているのを知った。これでこの山はすっかりトラウマになったのだが、冬は別。冬になるとここは別天地になるのだ。危険物はすべて土の中。真っ白なスノーハイクの楽園に変身する。
 温泉場の横から山に入り、大滝沢用水地を左に見ながら大きくこの池を巻くように登っていく。けっこうきつい斜面もあるし、危険なところも待っている。高尾山のように道路沿いを登るわけではないので、ワイルドな楽しみがいたるところに待ち受けている。登りにたっぷり2時間弱。もう立派な冬山だ。下りは別ルートで夏の登山口に下りていく。ここもたっぷり1時間はかかる。道川大滝のみえる東屋でランチ。山で食べるラーメンはうまいが、けっこう食欲旺盛なので、炭水化物の取りすぎが心配になるほど。東屋の横の水道が出っぱなしなのは凍結防止なのだろうか。

山頂の小屋で

ランチ後、道川大滝を出発
 ランチの後はもうひと歩き。用水池をもう半周する。けっこうハードな山歩き。ゴール地点からは、ちょっと寄り道。急峻な斜面を10分ほど一気に登って中世の豪族の城跡「春子館」跡を見学。斜面に3段、棚田のような形で城跡がはっきりわかった。で、春子って何者? 
 夏とは180度印象の違う山、というのも珍しいが、先週の高尾山も同じだ。夏は近づきたくないのに冬に魅力が倍増する。とにかく手つかずの雪景色が美しい。壮絶なほどという形容をつかいたくなるほどだ。冬が嫌いな人でも、こうした近場のスノーハイクで、冬に対するイメージが変わること請け合いだ。
 温泉は登り口近くにある大滝温泉をパスして、秋田温泉の日帰りの湯。泥色でぬるぬるの泉質だが、身体の火照りがしばらく続くほど「効く」。ここの温泉はけっこう好きだ。脱衣場が狭くて、ゆったり使えないのが欠点だ。なかなかすべてが合格点の温泉ってないもんだね。

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●No. 1 草紅葉の海で、なぜかパエリア
●No. 2 贅沢お昼と、お気に入り温泉
●No. 3 白神のブナの森を彷徨う
●No. 4 南八幡平の自然休養林を歩く
●No .5 巨木の森で、雨に追われて
●No. 6 何が悲しくて、遠い県境の雨の山へ(+クマの話)
●No. 7 「キジ撃ち」慣れ、増える体重、初めての山
●No. 8 雹に雷とスパイク長くつ、是山の山
●No .9 賞味期限切れ食品がうまい、きれいな三角山
●No.10 生きものたちと出あい、ラーメンうまい雪の山
●No.11 はじめての朝市、風格の天然杉、泥土のババ落とし
●No.12 雪と風とツェルトとストック
●No.13 「靴納め」はダブル山行、かててくわえて忘年会
●No.14 これが今年最後の山行です、信じてください!
●No.15 桜のつぼみが大きいから、春は早い……
●No.16 彷徨っても漂っても、頂上は遠い
●No.17 動物の足跡がないのは、「なまはげ」がいるからだ
●No.18 どんな山でも、なにか新しいことを学べるもんだ
●No.19 「山があるんで、お先に」って言ってしまった夜
●No.20 大滝を見にスノーハイク、帰りは古民家見学
●No.21 冬は近場にこそ遊び場がある+ついにシュールストロミング開缶!
●No.22 山頂で野点、そうか今日は「桃の節句」か
●No.23 青空、中岳、ひとりぽっち
●No.24 石仏に村人はどんな思いを託したのだろうか
●No.25 冬限定、地図に名前のない山に登る
●No.26 登山道のないやぶ山で、昆虫になる
●No.27 ダブル登山で、県北の春山に酔う
●No.28 GWは雪の回廊を抜け、強風の山頂に立つのが夢
●No.29 街から7キロ先に、千メートル級の山があるの?
●No.30 下水掃除と宮沢賢治とアイゼン登山
●No.31 青空・無風・トラブルなし。雑魚10匹より大物1匹
●No.32 みんな嫌がるけど、オレは好きだヨ、東山
●No.33 週末連続登山で、体力は大丈夫か、ジブン
●No.34 地元のプロと一緒だと、山歩きは百倍楽しい
●No.35 ブナと滝のシャワーを浴びて、少し元気になってきたゾ
●No.36 あれッ、なんだか人並みに体力がついてきたかな
●No.37 雷に追われ、山小屋泊まり、ガスっても岩手山は美しい
●No.38 県内最強のタフな山で、野立の誕生会
●No.39 中央アルプスで観光登山、それもまた楽し
●No.40 面白みはなくても、一度は登ってみたい虎毛山
●No.41 世界遺産の山で、会うのはへんなオジサンばかり
●No.42 ずっと踏破してみたかった、歴史の古道
●No.43 早池峰の、代替がきつかった、岩の山
●No.44 知っていそうで、知らなかった駒ヶ岳
●No.45 ストックを、持ち逃げされた秋の山伏
●No.46 侮ってしまった! やっぱり太平山系はきつい
●No.47 この山には、もう来られないかもしれない
●No.48 山よりも、ランチと温泉が楽しいこの季節
●No.49 晩秋の雪山は、みごとな小春日和
●No.50 今年もまた、やってきたリンゴ狩りの山
●No.51 33体プラス番外9体、石仏訪ね完全踏破
●No.52 地元の人と登れば、山の表情が違って見える
●No.53 今年最後の山は、懐ひろい森山へ
●No.54 さあ、今年もいよいよ登り始めだ
●No.55 体調はいまいち、侮れない高尾山

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