No.58
ずっと田沢湖を眺めながら登る、冬だけの山
[院内岳(751m)――2014年3月15日]
 院内といっても湯沢の先にある院内ではない。田沢湖の湖畔に屹立している751mの外輪山だ。夏季は藪に覆われて登山道がないからなじみはない。冬場だけ藪の上に降り積もった雪の上を通って山頂に立つことができる。
 初めての山だ。初めて、というのは緊張する。2週間前にモモヒキーズの例会登山でこの山に登ったのだが、あいにく仕事とバッテングしていけなかった。もう来年までお預けかとあきらめていたら、この土曜日に有志たちでまたトライするという。ありがたい。来年まで待たなくて済んだ。
 雪山ではいつもそうなのだが、悩んだのはスノーシューかワカン、どちらで登るかだ。念のため両方を持っていき経験者たちの意見を聞き、今日はワカンにした。意外だったのはスパイク長靴にスノーシューはダメ、ということ。スパイクのピンがスノーシューを傷つけてしまうのだそうだ。もう何十回となくスパイク長靴&スノーシューで登ってきたので、まさかダメなんて考えもしなかった。
 天気予報は曇りのち雪。でも登り始めから青空が顔を出し、登るにつれてその青空は広がり、深い青空のもとの登山になった。こんなこともあるんだなあ。
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大沢集落登山口を出発、平たんなスギ林の中の道を縫いながら林道分岐まで30分。ここから山道に入り約1時間半で薬師峠に。雪がゆるくワカンが沈む。急峻な坂が多いので機動性のあるワカンを選んだのだが、これならスノーシューのほうが正解だったかも。6名中4名がスノーシュー、私以外のワカン友のK女史はちゃんと登山靴を履いている。
 薬師峠の直前まできつい斜度が長く続く。でもこれを超えれば後は楽。ここから頂上までは40分弱。雪が重く、あいかわらずワカンが埋まるのだが、頂上付近でラッセルを代ってもらい、初登頂させてもらった。
この山の圧倒的なアドヴァンテージは、右手に美しい田沢湖が見えること。林の合間に田沢湖が顔を出すたび、「きれい!」という感嘆の声が上がる。女性たちにはたまらんだろうな。

山の横にはいつも田沢湖

初登頂は、やっぱりうれしい
 山頂で、いつものようにSシェフがランチのための雪上テーブルをスコップで作ってくれる。この頃は少し余裕が出てきたのでテーブルつくりを手伝えるようになった。前までは無精を決め込んでいたわけでなく体力的に余裕がなかったのだ。
 ランチはもっぱらカップ麺だ。特にそば系が好き。バーナーの調子が悪くて焦ったが、どうやらちゃんとメンテナンスしていないためガスが目づまりしているようだ。こんなところにも日頃のだらしなさが透けて見えてしまう。
山に慣れてきたとはいうものの700m級の高度では、好天といってもさすが30分もいると手足の指が冷たくなってくる。血流が悪くなるのだが、これだけは冬山のつきもので、どうしようもない。
下山は1時間半。やっぱりワカンではズボズボと埋まってしまう。足への負荷は半端ではない。登山口にたどりつくころには両足とも痙攣寸前、筋肉が悲鳴を上げていた。
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温泉は西木温泉「クリオン」。ここも清潔でいいお湯なのだが、露天風呂がないのが残念。お風呂上りには角館の安藤醸造本店に立ち寄り、名物の醤油ソフト。と行きたいところだが、小生はアイス類はご法度と決めている。ダイエットのためだ。「白だし」を1本だけ購入してがまんがまん。
明日の日曜も連チャンで秋田市の「二ッ森山」に登る予定だったが、思った以上に今日の院内岳がきつかったので、パス。

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●No. 1 草紅葉の海で、なぜかパエリア
●No. 2 贅沢お昼と、お気に入り温泉
●No. 3 白神のブナの森を彷徨う
●No. 4 南八幡平の自然休養林を歩く
●No .5 巨木の森で、雨に追われて
●No. 6 何が悲しくて、遠い県境の雨の山へ(+クマの話)
●No. 7 「キジ撃ち」慣れ、増える体重、初めての山
●No. 8 雹に雷とスパイク長くつ、是山の山
●No .9 賞味期限切れ食品がうまい、きれいな三角山
●No.10 生きものたちと出あい、ラーメンうまい雪の山
●No.11 はじめての朝市、風格の天然杉、泥土のババ落とし
●No.12 雪と風とツェルトとストック
●No.13 「靴納め」はダブル山行、かててくわえて忘年会
●No.14 これが今年最後の山行です、信じてください!
●No.15 桜のつぼみが大きいから、春は早い……
●No.16 彷徨っても漂っても、頂上は遠い
●No.17 動物の足跡がないのは、「なまはげ」がいるからだ
●No.18 どんな山でも、なにか新しいことを学べるもんだ
●No.19 「山があるんで、お先に」って言ってしまった夜
●No.20 大滝を見にスノーハイク、帰りは古民家見学
●No.21 冬は近場にこそ遊び場がある+ついにシュールストロミング開缶!
●No.22 山頂で野点、そうか今日は「桃の節句」か
●No.23 青空、中岳、ひとりぽっち
●No.24 石仏に村人はどんな思いを託したのだろうか
●No.25 冬限定、地図に名前のない山に登る
●No.26 登山道のないやぶ山で、昆虫になる
●No.27 ダブル登山で、県北の春山に酔う
●No.28 GWは雪の回廊を抜け、強風の山頂に立つのが夢
●No.29 街から7キロ先に、千メートル級の山があるの?
●No.30 下水掃除と宮沢賢治とアイゼン登山
●No.31 青空・無風・トラブルなし。雑魚10匹より大物1匹
●No.32 みんな嫌がるけど、オレは好きだヨ、東山
●No.33 週末連続登山で、体力は大丈夫か、ジブン
●No.34 地元のプロと一緒だと、山歩きは百倍楽しい
●No.35 ブナと滝のシャワーを浴びて、少し元気になってきたゾ
●No.36 あれッ、なんだか人並みに体力がついてきたかな
●No.37 雷に追われ、山小屋泊まり、ガスっても岩手山は美しい
●No.38 県内最強のタフな山で、野立の誕生会
●No.39 中央アルプスで観光登山、それもまた楽し
●No.40 面白みはなくても、一度は登ってみたい虎毛山
●No.41 世界遺産の山で、会うのはへんなオジサンばかり
●No.42 ずっと踏破してみたかった、歴史の古道
●No.43 早池峰の、代替がきつかった、岩の山
●No.44 知っていそうで、知らなかった駒ヶ岳
●No.45 ストックを、持ち逃げされた秋の山伏
●No.46 侮ってしまった! やっぱり太平山系はきつい
●No.47 この山には、もう来られないかもしれない
●No.48 山よりも、ランチと温泉が楽しいこの季節
●No.49 晩秋の雪山は、みごとな小春日和
●No.50 今年もまた、やってきたリンゴ狩りの山
●No.51 33体プラス番外9体、石仏訪ね完全踏破
●No.52 地元の人と登れば、山の表情が違って見える
●No.53 今年最後の山は、懐ひろい森山へ
●No.54 さあ、今年もいよいよ登り始めだ
●No.55 体調はいまいち、侮れない高尾山
●No.56 春子館にも立ち寄って、ここは冬の定番コースだ
●No.57 今年初の、本格的雪山を堪能

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